大腸がん

大腸がんとは

大腸は長さ1.5~2mで、回腸より連続し、右下腹部から始まり、右上腹部→左上腹部→左下腹部へ到り、肛門へつながる臓器で、結腸と直腸に分けられます。

図2. 大腸の区分

(大腸がん治療ガイドラインより)

大腸がんは大腸から発生する悪性腫瘍で、女性では死因の第1位、男性では第2位であり、年間4万人が亡くなられており、今後もさらに増加すると予想されています。

発生機序

大腸がんは大腸粘膜の細胞から発生し、ふたつの経路があると考えられています。

  • 1)良性の腺腫(adenoma)が発がん刺激を受けてがん化するもので、adenoma-carcinoma sequence(腺腫―がん連関)と呼ばれています。
  • 2)正常粘膜が発がん刺激を受けて直接がんが発生する経路で、デノボがん(de novoがん)と呼ばれれています。

発がん促進

大腸がんになりやすい因子または促進する因子は、動物性脂肪食、低繊維食、アルコール、喫煙、運動不足、ストレスなどがあげられます。

症状 ・・・ 思い当たる症状はありませんか?

早期発見、早期治療は何よりも大切です。肛門からの出血を痔と自己診断して放置して実は直腸がんであったり、便秘を放置して実は結腸がんであったケースが度々あります。“おしりの診察が恥ずかしい”といって病院に行きそびれてがんが進行してしまうことがないように注意が必要です。

1_便秘

大腸にがんができることにより腸管が狭くなり、便通が悪くなります。またS状結腸、直腸がんでは便柱が細くなります。

2_出血

排便時に出血がある、便に赤黒い血液が付着する、粘血便、黒っぽい便が出るなどの症状がある場合は要注意です。

3_貧血

目に見えないまたは気がつかない慢性的な出血が持続した結果、貧血症状が現れることがあります。

4_しこり

盲腸、上行結腸がんでは大きくなるまで症状が出にくいため、しこりとしてみつかることがあります。

診断

検査の目的は(1)がんの拾い出し(2)がんの確定診断(3)がんの部位を同定(4)がんの進行度の診断、などがあります。

1_検診

がんの拾い出しが主な目的です。

便潜血反応

便の中に混じった血液を検出します。陽性であれば大腸内視鏡検査や注腸検査を行い、病気の有無を調べます。

直腸指診

肛門から直腸内に指を挿入し、直腸内の腫瘍を検索します。これにより直腸がんが見つかることがあります。

2_注腸検査

肛門からバリウムを流し込み、大腸の壁を写す方法です。がんの部位、大きさ、深達度を評価したり、周囲の臓器や仙骨との位置関係を把握します。当院では年間約100例の注腸検査を行っています。

3_大腸内視鏡検査

肛門から内視鏡を挿入し、直接大腸の粘膜を観察します。がんの疑いがあれば細胞を採取し確定診断します。当院では年間約1,700例の大腸内視鏡検査を行っています。

4_CT検査

大腸がんと周囲臓器との位置関係、他臓器への転移やリンパ節転移の有無を調べます。

5_MRI検査

CT検査とほぼ同様の検索を行います。当院では直腸がんに対してendorectal coilを併用し、より詳細に深達度およびリンパ節転移を調べています。

がんの壁深達度、リンパ節転移、遠隔転移の程度を基に大腸がん取扱規約によるStage分類が定められており、治療方針の決定に重要です。

Stage分類(進行度分類)

  • Stage0:がんが粘膜の中にとどまっている。
  • StageⅠ:がんが大腸の壁にとどまっている。
  • StageⅡ:がんが大腸の壁の外まで浸潤している。
  • StageⅢ:リンパ節転移がある。
  • StageⅣ:血行性転移(肝転移、肺転移など)または腹膜播種がある。
図10. ステージ分類

(大腸がん治療ガイドラインより)

治療法

1_内視鏡的治療

内視鏡によりポリープや早期がんを切除することもできます。ポリープの茎にスネアという輪をかけて、高周波電流を流して焼き切ります。当院では年間約150例の内視鏡治療を行い良好な成績が得られています。
図18. ポリペクトミー

(大腸がん治療ガイドラインより)

2_結腸がんの手術

がんから10cm離れた部位で腸管を切り、リンパ節を扇状に切除し腸管をつなぎます。手術名は切除された腸管により結腸右半切除、横行結腸切除、結腸左半切除、S状結腸切除があります。

図21. 結腸切除術

(大腸がん治療ガイドラインより)

3_直腸がんの手術

1)直腸局所切除術

早期がんの場合、がんとがんの周囲の組織のみを切除します。リンパ節郭清はおこないません。当院では直腸の中に太い直腸鏡を挿入し、細長い器具を挿入して病変を切除し、縫合するTEM(Transanal Endoscopic Microsurgery)を導入し、人工肛門や開腹手術をしないですむように努めています。

2)前方切除術

肛門側はがんから2~3cm離して直腸を切り、直腸を切除後、器械を用いて吻合します。

3)直腸切断術

がんが肛門近くにある場合は、肛門を含めて直腸を切除し、人工肛門になります。人工肛門を造設した患者様に対して継続して管理できるように人工肛門専門外来を開設し、ET(専門看護師)とともに治療を行っています。

図23. 前方切除術
図23. 前方切除術

(大腸がん治療ガイドラインより)

4_腹腔鏡手術

炭酸ガスを腹腔内に入れ腹部を膨らませ、腹腔鏡でおなかの中を観察しながら、数か所の小さな孔から細長い器具を入れて腸管を剥離し、3~5cmの皮膚切開創より腸管を引き出し、腸管の切離、吻合を行い、腹腔内にもどします。層が小さいため、術後創の痛みが少なく、回復が早く、早期退院が可能となります。しかし、手術時間がかかり、術者のトレーニングが必要です。当院でもいち早く導入し(平成7年より)、多数の症例を経験しています。

図25. 腹腔鏡手術

(大腸がん治療ガイドラインより)

5_化学療法(抗がん剤療法)

抗がん剤を注射したり、内服する方法があります。手術後に再発を予防するための補助化学療法と、手術では取りきれないか、切除したが再発してきた場合に行う化学療法があります。最近の抗がん剤の進歩はすさまじく、奏功率も50%を超え、平均生存期間も2年を超えるようになりました。当院でも3剤の抗がん剤を併用する治療法(FORFOX、FORFIRI)をいち早く導入し効果をあげており、さらに分子標的治療薬(アバスチン)も平成19年11月より導入し最先端の化学療法を行っています。化学療法は種々の副作用が出てくるため、担当医とのきめ細かな管理が必要です。

6_放射線療法

局所療法として手術治療とは別に放射線療法があります。切除不能がんに対する症状緩和目的、術後再発予防、術前病変を縮小させ切除可能にしたり、人工肛門を避けるために(補助放射線療法)行います。照射している期間に生じる早期合併症と照射後数カ月から数年たって生じる晩期合併症があります。当院でも症例数は少ないですが行っています。