血液疾患領域での悪性腫瘍性疾患

急性骨髄性白血病とは

血液のがんです。この病気は骨髄の中で白血球ががん化し、異常に増殖するため、正常造血が障害されたり(貧血、血小板減少、易感染性)、白血病細胞の増加によりさまざまな症状(肝・脾腫大、歯肉腫脹、リンパ節腫脹、および骨痛など)を併発します。原因はまだはっきりとは解明されていません。放置すれば出血や重症感染症のため致命的となります。

治療法

診断された時点ですでに全身に拡がっているため、抗がん剤による化学療法を行います。場合によっては、脳や脊髄中の白血病細胞を消失させるために(または予防するために)、脳脊髄液中に抗がん剤を入れることもあります。 抗がん剤治療には大きく分けて寛解導入療法と寛解後療法があります。

1_寛解導入療法とは

最初に行う治療で、この治療の結果が予後を決定する可能性が高いとされています。この治療により約1~1.5ヵ月後に正常造血が回復し、骨髄中の白血病細胞が消失(見かけ上の治癒であるが白血病細胞は残存している状態)した状態を完全寛解といいます。1回の治療で完全寛解にならない場合には2回以上繰り返されます。完全寛解に至らない症例の予後は不良とされています。

2_寛解後療法とは

完全寛解になると骨髄や血液の中に白血病細胞はほとんど認められなくなりますが、目には見えなくても身体の中には1億個以上の白血病細胞があるとされています。これをこのまま放置すると再発の原因になります。残存白血病細胞の根絶を目的とした抗がん剤治療を寛解後療法といい、地固め療法、維持療法、強化療法などと呼ばれる治療法もこれに入ります。治療法、スケジュールはいろいろあり、投与期間も1~5年と幅があります。

造血幹細胞移植は最も強力な寛解後療法と考えられており、年齢や病型により移植が選択されることもあります。最近では、65歳位までの中高年者を対象に薬剤の強度を落とした同種造血幹細胞移植の試みもなされています。適応のある場合には後日詳しい説明をさせて頂きますが、全ての人が行える訳ではなく、HLAという組織の型が一致した提供者が必要です。

治療の合併症・副作用と対策

急性骨髄性白血病は急速に進行し致命的になりうるので、治療は強力に行う必要があります。治療により白血病細胞のみならず同時に正常な細胞も障害を受けることは避けられません。また、白血病ではもともと抵抗力が低下しているため、種々の合併症が生じやすいとされています。以下に、主な合併症・副作用とその対策について説明します。

1_嘔気・嘔吐

抗がん剤の副作用で生じ、投与直後から出現します。場合によっては食事摂取が不十分となるため、中心静脈カテーテルから高カロリー栄養や電解質の補充を行います。

最近では優れた吐き気止めがあるため程度は軽くなってきています。

2_脱毛

抗がん剤の副作用で生じます。治療を終了するとほとんどの場合は元に戻りますが。希に遷延することがあります。

3_正常白血球減少時の感染症

病気そのものにより、または抗がん剤の副作用で生じます。予防的には抗菌剤(抗カリニ、抗真菌)の内服、手洗い、およびうがいの励行などがありますが、実際に生じた場合には十分な抗生物質の投与を行います。また白血球数を増加させる薬剤を皮下注射します。

4_貧血・血小板減少

白血病自体でも生じますが、抗がん剤によってもおこり、貧血症状や出血症状が出ます。場合によっては致命的になることもありますので十分な治療が必要です。実際には、日本赤十字社から取り寄せた赤血球製剤、および血小板製剤を輸血することにより、減少した赤血球や血小板を補充します。輸血に関する説明書は別にありますので参考にして下さい。

5_その他

抗がん剤やその他必要な薬剤により、肝機能障害、腎機能障害、および心機能障害が出現することがあります。

予後

病型により異なりますが、最近の報告では全急性骨髄性白血病の寛解導入療法による完全寛解率は約70%に上り、そのうち約35%のケースでは長期寛解を維持しており、治癒の可能性が高いと思われます。