皮膚がん

皮膚がんとは

皮膚のどの成分から生じたがんなのかによって、実際の姿(臨床像)、経過、予後が全く異なります。ここではよくみられる代表的な皮膚がんをご紹介致します。

1_基底細胞がん

頻度の高い皮膚がんで、40~60歳に好発し、男女差はありません。日光や外傷、放射線などと関連があるといわれています。また、基礎疾患(色素性乾皮症、脂腺母斑など)から発症することもあり、この場合には若年者でも生じることがあります。

2_有棘細胞がん(扁平上皮がん)

表皮角化細胞の悪性増殖によるがんで、熱傷などの瘢痕性病変や光線角化症などのがん前駆症が先行病変として長期間みられた後に出現することが多く、それに加えて紫外線、ヒ素、タール、放射線などの発がん因子が発症に関与するといわれます。

3_ 悪性黒色腫(メラノーマ)

色素細胞の悪性腫瘍で、俗に「ほくろのがん」といわれているものです。正常皮膚に存在する色素細胞が悪性化して発症する場合と、ほくろなどから生じる場合もあります。また外傷、切除、紫外線、靴擦れ、熱傷瘢痕なども誘因となるといわれています。

症状

1_基底細胞がん

基本的に黒褐色の蝋(ロウ)様光沢性小結節で、病巣辺縁部に縁取るように配列するのが特徴で、80%以上が顔面に生じます。

2_有棘細胞がん

高齢者の露光部(顔面、手背など)に単発します。先行病変の上に結節が出現して、次第に拡大して腫瘤形成や潰瘍化を来たします。腫瘤は花キャベツ様増殖を呈し、表面が潰瘍化したものでは細菌の二次感染を来たして特有の悪臭を伴います。所属リンパ節に転移しやすく、受診時既に硬い皮下腫瘤を触れることがあります。

3_悪性黒色腫

成人以後になって気付かれる色素性病変であることが多く、当初は隆起しない斑状皮疹で変化も目立たないことが多いのですが、後には拡大、隆起し結節状病変を生じてきます。さらに進行するとびらん、潰瘍化してきます。皮疹は左右非対称性の不規則形状で、色調は黒褐色が主体ですが、濃淡差が無秩序に認められ、境界が一様でなく一部不鮮明であることが多いです。診断時の最大径は多くの場合7mm以上です。

診断

1_基底細胞がん

病理組織検査により確定診断がつきます。

2_有棘細胞がん

病理組織検査により確定診断がつきます。

3_悪性黒色腫

視診が最重要で、組織を採取する生検は腫瘍の播種を招く恐れがあるため、安易に行うべきではないとされています。

治療法

1_基底細胞がん

外科的切除が基本で、辺縁から5mm程度離して切除します。他に凍結療法や外用化学療法もあります。

2_有棘細胞がん

外科的切除が第1選択で、腫瘍の進行度によって辺縁から0.5~3cm程度離して切除します。リンパ節転移を認める場合は根治的リンパ節郭清術をも行います。他に放射線治療や化学療法もあります。

3_悪性黒色腫

腫瘍の進行度に応じて適切な治療法を選択する必要があります。腫瘍の厚みが1mm未満であれば辺縁から1cm程度離して切除すればよいですが、それ以上の厚みになると2~5cm離して全摘出し、その後植皮術や場合によっては切断術を施行します。所属リンパ節郭清も必要に応じて併行します。遠隔転移があるような場合は手術適応はほとんどなく、化学療法や放射線療法などを行いますが、化学療法の奏効率は30%以下といわれています。

予後

1_基底細胞がん

転移を生じることはほとんどないため生命予後は良好です。しかし切除しない限り正常組織を破壊しつつ無制限に増殖するので、早期の外科的治療が必要となります。

2_有棘細胞がん

腫瘍の進行度によって予後は分かれます。腫瘍の最大径が2cm以下のものは転移がなければ5年生存率はほぼ100%ですが、2cmを超えると85%程度に下がり、また腫瘍径に関わらず遠隔転移のある場合は3年生存率が45%程度といわれています。

3_悪性黒色腫

転移がない場合、組織標本上での腫瘍の厚みによって予後が規定されます。1mm以下の厚みではほぼ100%の5年生存率ですが、4.0mmを超えると約50%まで下がるといわれています。また所属リンパ節転移がある場合の5年生存率は約40%程度、遠隔転移を生じた場合の5年生存率は数%程度にすぎないといわれています。