前立腺がん

前立腺がんとは

現在急速に増加しているがんです。前立腺は膀胱の出口にあり、尿道を取り巻くように存在します。精液の一部を造るところです。取り除いても命に係わる臓器ではありません。

症状

早期に症状はありません。完治する人は、症状の無いうちに検診で早期発見できた人がほとんどです。

ひどくなると少しずつ症状が出てきます。頻尿、排尿困難、尿失禁、血尿など前立腺肥大症と同じ症状が出ます。もっとひどくなると痛みが全身に出てきます。

診断

前立腺腫瘍マーカー(PSA)を検診、かかりつけ医などで測定してもらってください。異常値が出た場合は、針で組織をとってがんがあるかどうか病理検査をします(前立腺生検)。PSAが4~10ng/ml(正常値は4未満)の人たちの内、約30%の人にがんが発見されます。がんが見つかった場合、次にCT、MRI、骨シンチなどの写真を撮って病気の広がり具合を診断します。

治療法

1_がんが前立腺に限局していると考えられる場合

  • 1)手術
  • 2)放射線治療(外照射)
  • 3)放射線治療(内照射)
  • 4)ホルモン療法
  • 5)治療しない(経過観察)

1)手術で前立腺を切除するのが標準的な治療法です。前立腺を膀胱と尿道から切り離し切除して、膀胱と尿道をつなぎます。同時にリンパ節の除去もできます。切除した組織を病理検査できますので、病気の進み具合が診断され追加治療の指標となります。尿は今までどおり尿道から出ます。出血して輸血する可能性があります。尿失禁の可能性がありますが尿取りパッドなどが必要な人は約10%ぐらいです。勃起障害になります。勃起障害を回避するために神経を残す手術法もありますが、根治性を下げる危険性もあります。晩期合併症はあまりありません。あとでほかの治療を追加できます。

2)放射線治療(外照射):前立腺に放射線を照射します。治療に約2ヶ月かかりますが、治療自体は1回15分程度で楽な方法です。前立腺はそのまま残っているので、根治したかどうか判定しにくい側面があります。勃起障害になります。晩期合併症(数年以上たってから起こる)として膀胱、直腸からの出血、尿道狭窄などが起こります。(5%程度といわれている。)一度起こると治療に難渋します。

3)放射線治療(内照射)は放射線針を60~70本会陰から前立腺内に打ち込む方法です。治療は手術より楽ですが、初期がんの中でも限られた人にしか適応がありません。勃起障害になりにくい治療です。

最近始まった治療なので、長期的な治療効果や副作用についてはまだ分らないことがあります。

上記3治療が局所を治療して根治を目指す方法です。これから10年以上の余命が見込める方が対象となります。日本人では一般的に75歳ぐらいまでと言われています。

上記1)~3)の局所治療を希望されない場合、
4)ホルモン療法を選択する方法もあります。定期的に注射するか睾丸を切除することで男性ホルモンの分泌を抑え、がんを抑制する治療です。これに飲み薬を追加することがあります。全身に効く治療なので転移があっても治療可能です。治療初期の肝機能障害、骨密度の低下、太りやすくなる、乳房が腫れるなどの副作用があります。必ず効果がありますが、いずれ効かなくなる時期が来ます。いつまで効果があるかは個人差があり、あらかじめ予測することはできません。

5)経過観察。病変が小さい前立腺がんの人の中には、時に進行しない人がいます。しかし進行しない人を見分ける方法が現在のところありません。前立腺腫瘍マーカー(PSA)を測定しながら経過観察をすることがあります。

2_前立腺に限局しているが、少し進行していると考えられる場合

  • 1)手術
  • 2)放射線治療(外照射)
  • 3)ホルモン療法

上記3療法を組み合わせて治療しています。どの方法、どの組み合わせが一番いいかはまだ分っていません。

3_所属リンパ節に転移している場合

一般的にはホルモン療法で治療しています。

手術療法、放射線療法を組み合わせることは技術的には可能ですがどこまで効果があるかは分りません。

4_遠隔転移がある場合

ホルモン療法で治療します。

疼痛コントロールのためモルヒネを使用したり、放射線治療を併用します。