胆管がん

胆管がんとは

胆管は肝臓でつくられる胆汁を十二指腸まで導く導管で、肝臓の中から木の枝が幹に向かって集まるように徐々に合流して太くなっていき、多くの場合、肝臓から出る際に左と右の胆管(左右の肝管)が合流して一本となります。胆管は、肝臓の中を走る肝内胆管と、肝臓の外に出てから小腸までの肝外胆管に分けられます。肝外胆管は長さが約8cmの細い「くだ」で、肝門部・上部・中部・下部胆管の4つに区分されます。肝外胆管の途中で胆汁を一時的にためておき、濃縮する袋が胆嚢(たんのう)です。胆管がんは胆管の上皮から発生する悪性腫瘍です。

年齢別にみた胆嚢・胆道がんの罹患(りかん)率、死亡率は、ともに50歳代以降増加します。

症状

1_黄疸

がんができることによって胆管内腔は閉塞し、胆汁が流れなくなります。細くなった部分より上流(肝臓側)の胆管は圧が上がって拡張し、ついには胆汁が胆管から逆流して血管の中に入るようになると、胆汁中に含まれるビリルビンという黄色い色素のために皮膚や目の白い部分が黄色くなります。これを閉塞性黄疸といいます。

2_白色便

胆汁が腸内に流れてこなくなると便の色が白っぽいクリーム色になります。

3_黄疸尿

血液中のビリルビン濃度が高くなると尿中に排泄されるようになり、尿の色が茶色っぽく濃くなります。

4_かゆみ

黄疸が出ると皮膚のかゆみも同時にあらわれることが多く、これは胆汁中の胆汁酸という物質がビリルビンと一緒に血管内に逆流するためです。

診断

胆管がんは、周りの組織にしみ込むように拡がることが多く、明瞭な腫瘍としてのかたまりをつくらないので、その実体を正確に描出し診断することは容易ではありません。しかし、近年では画像診断技術の進歩により胆管がんをより早期に発見し、またその存在部位や拡がりをかなり正確に診断できるようになりました。

1_超音波検査

胆管の拡張を調べるのに適しており、外科的処置が必要な閉塞性黄疸かどうかの判断にとても有用です。胆管の拡張の仕方を見ることで胆管の閉塞部を推測できます。また、ある程度かたまりとしての腫瘍をとらえることができます。外来で手軽に行うことができ、苦痛も全くなく、すぐに検査結果がわかります。

2_CT

腫瘍の存在部位や拡がりをとらえることができます。胆管の拡張程度・部位も調べることができます。また造影剤を用いることで、腫瘍を浮かび上がらせることもでき、腫瘍がどの程度周囲の血管に浸潤(しんじゅん:がんが周囲に拡がること)しているかも推測できます。

3_MRI、MRCP

CTと同様に胆管の拡張や病変の存在部位・拡がりを診断できますが、CTとは情報の内容が違い、互いに相補って診断に寄与します。MRCPという方法を用いることにより胆管、膵管の形を詳しく調べることができます。

4_PTC(経皮経肝胆道造影)

がんのために胆汁の流れをせき止められ、太くなった上流の胆管に直接針を刺し、造影剤を注入する方法です。胆管の狭窄(きょうさく)・閉塞の様子が詳しくわかり、腫瘍の存在部位や拡がりの診断に有用です。同時に黄疸の治療として、下流に流れなくなった胆汁を身体の外に導出する処置も行うのが普通です。とり出した胆汁中のがん細胞を調べることでがんの確定診断に有用です。

5_ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)

ファイバースコープを十二指腸まで挿入し、胆管と膵管の出口である十二指腸乳頭から細いチューブを入れ、造影剤を注入して胆管や膵管のかたちを調べる方法です。PTCとは逆に、詰まっている部分より下流の情報が主に得られます。PTCと併用することで、狭窄・閉塞部位についてより詳しい情報が得られます。

6_その他の検査

血管造影検査は、手術の前に肝臓や膵臓の周りの血管への腫瘍による浸潤や走行異常を調べるために施行します。

治療と副作用

治療法には外科療法、放射線療法、化学療法があります。

1_外科療法

肝外胆管は、肝臓と膵臓・十二指腸の間にある臓器で、周囲には門脈や肝動脈という重要な血管が走行しているので、手術ではどの程度までがんが拡がっているかが重要になってきます。胆管の手術では、がんが少し周囲に拡がっただけでも手術で治すために、いろいろな臓器を合併切除しなければならなくなります。手術では、胆管とその周囲のリンパ節を含んだ結合組織をまとめて切りとるのが基本です。また、術式はがんが胆管のどの場所にできたかでも違ってきます。

肝門部胆管と上部胆管にできたがんは、肝臓にかかわってきます。肝門部は胆管や血管が肝臓に出入りする場所であり、扇のかなめのような位置にあります。この場所にできた腫瘍を切除するには、かなり限局している場合を除いて、肝臓の左右どちらか半分か真ん中をとるかして、できるだけ根治的な切除を目指します。

下部胆管は膵臓に近接しているので、膵臓の一部を一緒にとる必要があります。

中部胆管もそこだけとり除いて済む場合はまれで、肝臓側か膵臓側のどちらかに拡がっています。通常は膵臓を一緒に切除します。

また、がんの浸潤範囲が肝門部胆管から下部胆管まで拡がっていると、肝臓・膵臓両方を同時に切除しなくてはならなくなりますが、このような手術はまだ安全に施行できるとはいえない状況なので治療法の選択が難しくなります。

このように胆管がんでは定型術式といったものはなく、がんの拡がりに応じた、安全でできるだけ根治的な術式が選択されます。胃がんや大腸がんでは、診断・治療の体系がほぼ確立されてきていますが、胆管がんを含めた肝胆膵領域がんではまだまだ日進月歩の状態なのです。

手術の危険度については、手術規模がかなり大きくなること、肝臓や膵臓などの生命に極めて重要な臓器に直接操作が加わることで、術後合併症や手術死亡は他の臓器のそれより依然高率なのが現状です。手術を受ける前にはその手術でどのようなメリットがあり、どの程度の危険度があるのかをよく理解しておく必要があります。

2_放射線療法

外科的に切除できない場合や、手術で主病巣を切除した後の後療法として放射線治療が有効な場合があります。

急性期の副作用としては、全身倦怠感、食欲不振などがあります。また、ある程度時間が経過してから、消化管では潰瘍形成・出血、胆管では閉塞、血管では閉塞や出血などが生じます。

3_化学療法

胆管がんに対する抗がん剤治療は、まとまった報告がありません。投与の方法としては、(1)経静脈的投与、(2)経動脈的投与、(3)経口投与、(4)局所投与があります。化学療法が胆管がんに対してどの程度有効かは、これから検討されていく問題です。

治療法の選択について

胆管がんの領域は、まだ標準的な診断・治療が確立しておらず、特に、肝臓の入口近く(肝門部)にできた胆管がんは、一般的には外科切除は困難とされており、最初に診察した医師の判断が重要になります。胆管がんに対して有効といえる治療法は外科切除をおいて他にないのが現状ですから、胆管がん(胆嚢がんも)と診断されたら、手術の可能性について専門医に必ず相談するようにして下さい。

生存率と再発

再発は、いろいろな部位におこります。再発様式によりおこる症状もさまざまで、治療もそれぞれの状態に合わせて行われます。

手術でがんがとりきれていると判定された場合の5年生存率は40~50%ぐらいです。また、顕微鏡で見たレベルで少し残っている場合でも5年生存率は10~20%です。今のところ、放射線療法や化学療法では完全な治癒は望めません。

(国立がんセンターがん対策情報センター情報サービスより一部抜粋)