子宮頚がん
子宮頚がんとは
子宮は骨盤内にある臓器で、成人女性の子宮の大きさは鶏卵大程度です。子宮は体部と頚部に分けられ、子宮頚部に発生するがんを子宮頚がんといいます。子宮頚がんは婦人科悪性腫瘍のなかでは最も多いがんです。子宮頚がんの有病率は、30歳代で0.29%、40歳代で0.13%、50歳代で0.08%と若年者に多くみられます。子宮頚部を覆う上皮内に異常細胞が存在する前がん病変とよばれる異形成や上皮内がんの段階で発見することにより、子宮の温存も可能になりました。子宮頚がんの発生には性行為によって感染するヒトパピローマウイルスが関与していることが明らかとなっています。
症状
前がん状態や浸潤はじめの頃には自覚症状がでないことが多く、性交渉に伴う接触出血がみられる程度です。症状が出てから産婦人科を訪れても、その段階でかなり病気が進んでしまっていることが多いのです。そうならないためには、きちんと検診を受ける必要があります。
診断
1_細胞診
子宮頚がんの診断には細胞診が有効です。子宮頚部をへらやブラシで擦り、子宮頸部の細胞をスライドガラスに塗り付け、顕微鏡で異常細胞の有無を調べます。この検査を細胞診とか、スメア検査と呼んでいます。細胞診の結果はクラスという分類法を用いています。このクラス分類はがんの進行期(Ⅰ~Ⅳ期であらわします)を表すものではありません。
2_細胞診で異常がでて婦人科を受診される場合
細胞診で異常がでて婦人科を受診される場合、細胞診の再検査と同時に、子宮頸部を拡大鏡で観察する「コルポスコピー」と呼ばれる検査をされることがあります。そして、病気の度合いが最も強そうな場所を見極め、その場所を狙って組織を少し削り取ってくる、「ねらい組織診」を行います。このコルポスコピーでは十分に病変が確認できませんが細胞診では異常が出ているような場合には、病気の起こりやすい部分全体を円錐形に切り取り、そのなかにどの程度の病気があるのかを診断します。これを診断のための円錐切除術と言います。このような段階を経て、子宮頚部の初期がんや前がん病変は診断されるのです。
3_進行したがんについて
進行したがんについては、内診や、体の表面から触れることの出来るリンパ節(首の周囲や鼠径部)の状況、そしてレントゲン検査やCT、MRIなどの検査の結果で進行期が決まることになります。この進行期の決定が治療方針を決める上で大変重要です。
4_細胞診のクラス分類
新表記ベセスダシステム
ベセスダシステム表示 | 従来のクラス表示 | 所見 | 検診後の対応 |
---|---|---|---|
NILM | クラスⅠ・Ⅱ | 正常な細胞のみ | 毎年の定期検診で様子を見る。 |
ASC-US | クラスⅡ・Ⅲa | 異形成と言いきれないが細胞に変化がある | HPV検査をして、陰性なら毎年の定期検診で様子を見守ること。陽性なら「コルポ診」と「生検」を行う。 |
ASC-H | クラスⅢa・Ⅲb | 高度な細胞異型の可能性があるが確定できない | 「コルポ診」と「生検」を行う。 |
LSIL | クラスⅢa | HPV感染や軽度異形成と考えられる | 「コルポ診」と「生検」を行う。 |
HSIL | クラスⅢa・Ⅲb・Ⅳ | 中等度異形成・高度異形成・上皮内癌(早期がん)と考えられる | 「コルポ診」と「生検」に加え、頸管内組織検査または円錐切除が必要になる場合がある。 |
SCC | クラスⅣ・Ⅴ | 明らかな扁平上皮癌と考えられる | 円錐切除またはそれ以上の切除が必要。 |
5_臨床進行期分類
0期 | - | 上皮内がん |
---|---|---|
Ⅰ期 | Ⅰa1・Ⅰa2・Ⅰb1・Ⅰb2 | がんが組織学的あるいは肉眼的に子宮頚部に限局するもの(体部浸潤の有無は考慮しない) |
Ⅱ期 | Ⅱa・Ⅱb | 頚部を超えて広がっているが、骨盤壁または腟壁下1/3には達していないもの |
Ⅲ期 | Ⅲa・Ⅲb | 浸潤が骨盤壁まで達するもの、または腟壁浸潤が下1/3に達するもの |
Ⅳ期 | Ⅳa・Ⅳb | がんが小骨盤腔を超えて広がるか、膀胱、直腸の粘膜を侵すもの |
治療法
前がん状態や0期の上皮内がんの診断がついた場合には、妊娠の可能性を残すための円錐切除術や単純子宮全摘術などの手術療法を行います。
Ⅰb期以上の患者様に対しては手術と放射線療法が行われます。日本では多くの施設で、Ⅱb期までは手術を行っています。この場合の手術は、リンパ節郭清を含む広汎な子宮全摘術が選ばれています。子宮頚がんⅢb期、Ⅳa期の患者様には、放射線治療、最近では放射線と抗がん剤治療を同時に行う放射線、抗がん剤同時併用療法が行われています。
予後
初期のものほど生存率は良好ですので、早期発見早期治療の必要があります。 以下に示す生存率は年齢や合併症の有無などの影響もうけますので、おおまかな目安と考えてください。
わが国における子宮頚がんの5年生存率
(日本産婦人科学会腫瘍委員会報告、2004年より改変)
臨床進行期 | 症例数 | 5年生存率(%) |
---|---|---|
Ⅰ | 11,258(51.4%) | 82.3 |
Ⅱ | 5,716(26.1%) | 61.4 |
Ⅲ | 3,859(17.6%) | 37.6 |
Ⅳ | 1,077(4.9%) | 12.6 |