胆嚢がん

胆嚢(たんのう)がんとは

肝臓から分泌された胆汁が十二指腸に流れ出るまでの経路を胆道といい、胆嚢管という細い管を介して、胆汁を一時的に貯留しておく袋状の部分が胆嚢です。胆嚢および胆嚢管にできるがんを胆嚢がんといいます。

年齢別にみた胆嚢・胆道がんの罹患(りかん)率、死亡率は、ともに50歳代以降増加します。

超音波検査の普及で、胆嚢に腫瘍が発見される機会が増加しました。胆嚢の腫瘍には悪性腫瘍である胆嚢がん以外に腺腫や各種のポリープなどの良性腫瘍が数多くみられます。したがって、胆嚢腫瘍をただちに胆嚢がんと考える必要はありませんが、専門医による確実な診断を受けることが大切です。

症状

胆嚢がんの初期では、併存する胆石症や胆嚢炎による腹痛や発熱などの症状が出現することはあっても、がん自体による特徴的な症状はありません。しかし、胆嚢がんが進行して、他の臓器(総胆管、十二指腸、肝臓など)に進展すると、その程度により種々の症状が出てきます。

1_腹痛

最もよくみられる症状で、上腹部や右の肋骨の下に鈍痛が出現します。胆石が合併していれば、繰り返しおこる強い痛みや右の背中へ広がる痛みがおこることがあります。

2_黄疸

次によくみられる症状で、がんが進行し胆汁の通路である胆道を閉塞すると出現するものです。通常は進行がんにみられる症状です。

3_腹部腫瘤(しゅりゅう)

右の肋骨の下に腫瘤として胆嚢を触れることがあります。黄疸がある場合は、腫大した肝臓の一部を触れたりします。

診断

1_定期検診

40歳を過ぎたら、年に1回は人間ドックなどの定期検診を受けて下さい。通常は胆嚢の超音波検査が行われますので、無症状の胆嚢がんが発見されることがあります。他のがんと同様ですが、最も大切なことは早期発見です。胆石症がある場合は、無症状でも定期的なチェックや治療が必要です。

2_血液検査

胆嚢がんの初期では血液検査で異常は出ません。しかし、がんが近くにある胆道を圧迫するようになると、血清ビリルビンやアルカリフォスファターゼが異常高値となり、さらに進むと黄疸が出ることがあります。腫瘍マーカーの数値が、胆嚢がんの50~80%で高値になります。ただし、これらの検査は胆嚢がんで必ず上昇するとは限らず、あくまで補助的な検査です。したがって、次にあげる画像検査を受けることが大切です。

3_画像検査

各種画像検査の中では、超音波検査は苦痛が少なく反復して行えるので、胆嚢疾患のスクリーニングとして最適です。この検査により、最近では小さながんや早期のがんが数多く発見できるようになりました。超音波検査で胆嚢がよく見えない時や胆嚢に何らかの異常が疑われれば、次の検査としてCTやMRIが行われます。これにより、胆嚢がんの確認およびがんの周囲への進行状況や、他の臓器への転移の有無などが確認されます。次に、内視鏡を用いて十二指腸への胆道の出口から細い管を胆管に挿入して、直接胆道を造影する内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)と呼ばれる検査があります。さらに、手術を予定している場合には血管造影が行われ、胆嚢がんの肝動脈や門脈への拡がりの有無を調べます。

病期

胆嚢がんがどの程度進行しているかをあらわす目安を病期といいます。

Ⅰ期

がんが胆嚢壁の粘膜や筋層にとどまっており、リンパ節転移もない状態です。

Ⅱ期

がんが胆嚢壁内にとどまっているが、I期よりは進行している状態です。胆嚢壁や周囲への進展度、リンパ節転移の有無によって細かく規定されています。

Ⅲ期

がんが胆嚢壁の外に露出した状態を主として示します。リンパ節転移を伴っている場合が多く、肝臓や胆管側への浸潤も認められます。

Ⅳ期

胆嚢以外の周囲臓器への浸潤があり、主要な血管への浸潤を認めたり、肝臓・胆管側への浸潤がさらに高度になった状態を示します。

治療

胆嚢がんの治療は、手術が原則です。胆嚢がんはⅠ期の早期がんであれば胆嚢を摘出するだけでほぼ根治が得られますが、Ⅱ期以上では胆嚢以外の臓器を合併した切除が必要となり、Ⅳ期では切除によっても予後の改善が認められないため、化学療法や放射線療法の適応となることがあります。

1_手術(外科治療)

胆嚢がんは胆嚢壁内にとどまっている場合は胆嚢や肝臓の一部を切除することで比較的良好な予後が得られます。しかし、いったん、胆嚢の壁を越えて、隣接する肝臓や胆管、十二指腸、大腸などの臓器に浸潤すると、複数の臓器を合併した切除が必要となり、再発のリスクも高くなります。肝臓に多くの転移を認める場合、胆嚢から離れたリンパ節に転移を認める場合、腹膜播種のある場合などは、切除を行っても予後の改善が認められないため、他の治療を行うことになります。

(1)単純胆嚢摘出術

Ⅰ期の胆嚢がんでは、胆嚢を摘出するだけで良好な予後が得られます。胆嚢ポリープという診断で腹腔鏡を用いた胆嚢の摘出術が行われ、病理検索を行った結果でがんが判明した場合、Ⅰ期であれば一般にはそれ以上の追加切除は必要ないことになります。

(2)拡大胆嚢摘出術

Ⅱ期以上の胆嚢がんを疑う場合に、標準的に行われる術式です。胆嚢を含めて隣接する肝臓の一部と、所属リンパ節を一緒に切除する方法です。がんの進展度によっては総胆管を一緒に切除することもあります。前述の、術前に確定診断に至らなかった胆嚢がんでは、再度開腹して、リンパ節や肝臓の一部などの追加切除が行われる場合もあります。

(3)それ以上の拡大切除

病期Ⅲ、Ⅳの場合には、病変の状態によっては以下の術式が採用されることがあります。

a) 肝葉切除

胆嚢がんが肝臓に広範に浸潤した場合や、総胆管側に明らかに浸潤した場合は、肝葉切除といって肝臓の右葉を主に切除する必要が生じます。所属リンパ節の切除や胆管の切除を伴い、さらにそれらの臓器を再建することになります。

b) 膵頭十二指腸切除

胆嚢がんは膵臓周囲のリンパ節に転移することも多く、術前に明らかに転移を認める場合や、十二指腸や膵頭部に強い浸潤を認める場合には、膵頭十二指腸切除が行われることがあります。膵臓の頭部、十二指腸、リンパ節、胆嚢や胆管が大きく切除されることになります。

(4)その他の外科治療

切除を目的に開腹を行ったが、播種や肝転移を認めたために、病期を確認するにとどめて、切除は行わない場合があります。これは、切除を行っても予後の改善が期待されないため、患者様に手術という侵襲を加えないようにするためです。十二指腸や大腸に胆嚢がんが浸潤したために消化管の通過障害がある場合はバイパス術を行うことがあります。

2_抗がん剤による化学療法

胆嚢がんに対する抗がん剤治療は、まとまった報告がありません。投与の方法としては、(1)経静脈的投与、(2)経動脈的投与、(3)経口投与、(4)局所投与があります。化学療法が胆嚢がんに対してどの程度有効かは、これから検討されていく問題です。

3_放射線療法

胆嚢がんに対する放射線療法は、一般的にはあまり効果が期待できないといわれています。しかし、放射線によく反応し、がんが縮小したり、胆管閉塞が改善されるため、黄疸が緩和されるなどの効果がみられることがあります。

(国立がんセンターがん対策情報センター情報サービスより一部抜粋)