血液疾患領域での悪性腫瘍性疾患

骨髄異形成症候群とは

以前は「前白血病状態」、あるいは「くすぶり型白血病」と呼ばれ、治療に反応しにくい原因不明の貧血の一部として扱われてきました。50歳以上の高齢者に多いとされますが、数%は若年者にも発症します。

この病気は血液のもとになる細胞(造血幹細胞)が何らかの異常をきたし、正常造血が障害され(貧血、血小板減少、易感染性)、程度によっては白血病と類似の病態に移行します。その発症のメカニズムはまだ特定できておらず、いろいろな原因が重なりあっておこると考えられています。この病気には、厳密には、いろいろな程度や状態があり、いくつかの病態が重なりあい、移行しつつあるものとして考えられています。

治療法

治療方法には、症状に応じた対症的な治療と積極的な治療方法とがあります。年齢、健康状態によっても違ってきます。治療もその種類と進行度に応じて異なります。具体的には、血球減少の程度や染色体異常や骨髄中の芽球(幼弱な細胞の割合)等で白血病への移行リスクを判断し、治療方針を検討します。

1_無治療、経過観察

白血病になる可能性が低いと判断された場合は、診断が確定してからも輸血をする必要もなく、無治療で経過観察のみでよい場合も少なくありません。

2_赤血球輸血、血小板輸血

対症療法のひとつです。貧血が進行している場合、その症状改善のために赤血球輸血を行います。貧血の進行は病状の進行と無関係ではありません。出血傾向のある場合には血小板輸血が必要です。白血球減少症には無治療で経過をみますが、身体の抵抗力が弱って感染症を併発しやすくなります。

3_化学療法、細胞増殖因子などによる生物学的治療、造血幹細胞移植

1 化学療法

白血病になる可能性が高いと判断された場合は、化学療法(抗がん剤)が選択される場合があります。注射薬(アザシチジン、シタラビン等)などがあります。化学療法は、骨髄中のがん細胞を減らす目的で行われますが、白血球減少症、血小板減少症、脱毛、吐き気といった副作用もおこります。

特別な染色体異常(5番染色体長腕の欠失)がみられる場合、レナリドマイドの内服薬が有効とされており、選択される場合があります。

2 造血幹細胞移植

比較的発症年齢が若い場合には、造血幹細胞移植治療が実施されます。また最近では、65歳位までの中高年者を対象に薬剤の強度を落とした同種造血幹細胞移植の試みがなされています。全ての人が行える訳ではなく、HLAという組織の型が一致した提供者が必要です。

治療の副作用と対策

治療により白血病細胞のみならず同時に正常な細胞も障害を受けることは避けられません。また、白血病ではもともと抵抗力が低下しているため、種々の合併症が生じやすいとされています。以下に、主な合併症・副作用とその対策について説明します。

1_嘔気・嘔吐

抗癌剤の副作用で生じ、投与直後から出現します。最近では優れた吐き気止めがあるため程度は軽くなってきています。

2_脱毛

抗癌剤の副作用で生じます。治療を終了するとほとんどの場合は元に戻りますが。希に遷延します。

3_正常白血球減少時の感染症

病気そのものにより、または抗癌剤の副作用で生じます。予防的には抗菌剤の内服、手洗い、およびうがいの励行などがありますが、実際に生じた場合には十分な抗生物質の投与を行います。

4_貧血・血小板減少

骨髄異形成症候群自体でも生じますが、抗癌剤によってもおこり、貧血症状や出血症状が出ます。場合によっては致命的になることもありますので十分な治療が必要です。実際には、赤血球製剤、および血小板製剤を輸血することにより、減少した赤血球や血小板を補充します。

5_その他

抗癌剤やその他必要な薬剤により、肝機能障害、腎機能障害、および心機能障害が出現することがあります。