南予医学雑誌20巻
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-81-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020治療などの医療技術の進歩もあり、その半数以上が治る時代となっています。国立がん研究センターがん情報サービスによれば2006年から2008年にがんと診断された人の5年相対生存率は男女計62.1%、男性59.1%、女性66%です。従って、治療を終えたり、あるいは治療中であったりといったがん患者はこれからも増加を続け、がんと共存する多くの人たちに加え、治療により治癒した後に残る様々な障害と共に人生を送る人たちが多くいるということになります。例えば嚥下障害、認知障害、リンパ浮腫、末梢神経炎等々、がんの種類による様々な障害に苦しむ人たちに対して、リハビリテーションが早期に介入することにより、低下した機能を回復、あるいは維持し、さらに二次障害を予防することが重要であることは容易に想像できます。また、がんと診断された直後の周術期や、化学療法あるいは放射線治療前から積極的にリハビリテーションを行うことにより、術後の呼吸器合併症をはじめとする治療に伴う様々な有害反応を軽減させることは多くのがんにおいて認められています。2)  また、残念ながら治癒の望めない進行したがん患者についても、たとえ同じ生命予後であってもQOLを可能な限り高く保ち、ADLを維持、改善する手助けをすることは重要なことです。さらに、精神面においてもその役割は無視できません2)。 研修会では各分野のエキスパートによる資料を示しながらの講義の他に、がんリハビリテーションにおける個人や施設での問題点の洗い出し、症例を提示されてのリハビリテーション計画の作成、各施設での今後のがんリハビリテーションの目標設定についてのグループワークが行われました。その中で、いまだ各施設ともにがんリハビリテーションについては多くの問題が残存していることが明らかとなりました。 当院も含めて各施設がまず問題点として挙げたのは、第一にマンパワーの問題でした。当院のリハビリテーションのスタッフは現在、理学療法士10名、作業療法士3名、言語聴覚士2名(うち1名は育休中)とのことですが、他施設と比較しても少ない人数で頑張っているという印象でした。すでに当院より2014年5月には医師1名、看護師1名、理学療法士1名、作業療法士1名がこの研修会に参加し、以後がんのリハビリテーションを開始してはいるものの、すべての需要に対応することは困難な状況と思われます。その解決策としては、がんリハビリテーションの入院期間短縮への貢献や病院の収益性の改善についてのデータを示してのアピール、他職種間カンファレンスの開催や医療者側へのがんリハビリテーションの周知などが語られていました。尚、写真2は問題点の洗い出しについて一緒に作業した鹿児島県今給黎総合病院の方々との記念写真、写真3は当院での目標設定の作業風景、写真4は結果発表の場面です。 他施設の発表や質疑応答を見ても、がんリハビリテーションについてはいまだ各施設内での認知度も低く、収益性やその効果に対する認識も今一つという状況のようです。私自身、放射線治療医として多くのがん患者に携わりながらも、がんリハビリテーションについてはあまり深く考えたことはありませんでした。この研修会への参加を機会として、がんリハビリテーションの必要性を深く認識したところです。ここ南予地方でも当院が先駆けとなり、がんリハビリテーションの恩恵を受ける人々がさらに増えていくことを期待せざるを得ません。

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