南予医学雑誌20巻
78/88

-76-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020(図4)上腸間膜動脈造影, 前下膵十二指腸動脈造影(□) AIPDに動脈瘤を認める(→)。AIPDは第2空腸動脈から分岐していた。このあと動脈瘤の近位部と遠位部を金属コイルで塞栓し、動脈瘤は消失した。 MALは通常、腹腔動脈の頭側を走行するが10~24%で腹腔動脈の起始部を覆い、様々な程度の狭窄を来す1)。近年、MALによる腹腔動脈起始部狭窄が原因で膵アーケードの逆行性血流が増加し、膵十二指腸領域に動脈瘤を形成することや(flow related aneurysm)、膵頭十二指腸切除後に肝梗塞を来すことが注目されている2-5)。一般的なMALSの症状は上腹部臓器の虚血症状や腹腔動脈周囲の神経叢の圧迫による疼痛であるが、実際には本例のように、その多くが膵十二指腸領域の動脈瘤破裂で発見される5)。 腹部内臓動脈瘤における膵十二指腸動脈瘤の頻度は、脾動脈瘤の60%、肝動脈瘤の20%などに比べ2%と低いが 6)、この領域の動脈瘤の68~74%に腹腔動脈の閉塞・狭窄を伴うという特徴があり7)、両者には明らかな関連がある。そして腹考   察腔動脈起始部閉塞・狭窄の原因の30%を占めるのがMALSである2)。動脈瘤は上腸間膜動脈優位となった血流量を反映して膵アーケードの下流に多く発生し、前後のアーケードでは差がない8)。本例も前下膵十二指腸動脈に動脈瘤を認めた。 MALSの画像診断の第一選択は造影CTであり、矢状断再構成像や3D-CTAで腹腔動脈起始部に正中弓状靭帯による上方からの圧迫、いわゆる「hooked appearance」・「J型」の狭窄像が観察される1)。横断像のみでは見過ごされることも多いと考えられる。血管造影では上腸間膜動脈から腹腔動脈方向への膵アーケードを介した逆行性の血流を認める5, 9)。診断には動脈硬化による狭窄やSAM(segmental arterial mediolysis)の否定が必要だが、経過を追って判断せざるを得ない場合もある5)。本例は動脈硬化がなく、腹腔動脈起始部の特徴的な形状や上腸間膜動脈造影所見から、MALSによ

元のページ  ../index.html#78

このブックを見る