南予医学雑誌20巻
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-69-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020(図4)EUS-FNAでの腫瘍病理所見A:HE染色 腫瘍細胞は乳頭状・胞巣状に増殖しているB:シナプトフィジン染色 陽性細胞を多数認める 胃神経内分腫瘍は胃悪性腫瘍全体の約0.1~0.6%と極めて珍しい疾患1)-2)であり、治療方針についてはまだ明確なコンセンサスが得られていない。悪性度や臨床経過と相関するため治療方針については、基礎疾患や高ガストリン血症の有無で分類したRindi分類が汎用されている3)。3つのタイプに分類されており、Ⅰ型は自己免疫性胃炎、Ⅱ型はZollinger-Ellison症候群を基礎疾患とし、高ガストリン血症を認めるものである。また、Ⅲ型は基礎疾患を伴わず、高ガストリン血症も認めないものである。 本症例においては、発症時は血中ガストリンの測定はしていなかったが、術後3年目での測定では血中ガストリン462152pg/mLと異常高値であり、Ⅱ型である可能性は否定できなかった。胃神経内分泌腫瘍は腫瘍径10mm以下でも8.2%でリンパ節転移する可能性があり4)、慎重な方針決定が要求される。考   察Pubmedと医学中央雑誌で1988年から2019年の期間で「リンパ節転移」「胃NET(神経内分泌腫瘍)」をキーワードに検索したところ、径10mm以下でリンパ節転移を有していた症例は自験例も含め16例であった(表1)5)-19)。特徴としてはRindi分類ではⅢ型、Ⅰ型の順で多く、Ⅱ型は認めなかった。また5mm以下に関してはⅢ型のみであった。 以上よりⅢ型がよりリンパ節転移の可能性が高く、小さい病変でも転移する可能性が高いと判断され、より悪性度が高いと思われる。 深達度に関しては自験例以外では粘膜下層(以下SM)までであったが、自験例については10mmと小病変にも関わらず固有筋層(以下MP)まで深達していた。以上より胃神経内分泌腫瘍を疑う所見を認めた際には、Rindi分類も併用してⅢ型であれば腫瘍径によらず切除を検討すべきであり、Ⅰ型、Ⅱ型であってもリンパ節転移を認めている症例もあるため慎重な治療方針が望まれる。

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