南予医学雑誌20巻
69/88

-67-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 胃神経内分泌腫瘍は胃悪性腫瘍の中でも極めて稀な疾患である。治療方針については未だ十分なコンセンサスが得られていない。今回我々は、腫瘍径10mm以下にも関わらず術後に多発再発を認めた胃神経内分泌腫瘍の症例を経験したので報告する。序   言【症 例】70歳代 女性【主 訴】咽頭痛、嘔吐 【現病歴】2015年10月×日に咽頭痛、嘔吐を主訴に当院内科を受診した。同日、上部消化管内視鏡検査を施行し、胃前庭部大弯に10mm大の乳頭状隆起を認めた(図1)。隆起の中央はさらに隆起していた。中央の隆起はNarrow Band Imaging(以下NBI)を用いた拡大観察では表面粘膜の腺管構造が消失していた。隆起のなだらかな立ち上がりからは粘膜下腫瘍を疑うが、表面粘膜での腺管構造の消失からは上皮性腫瘍も否定は出来なかった。中央の隆起から生検すると、腺癌が疑われたため、外科切除を行った。術後病理で症   例は腫瘍は充実性の胞巣形成や網目状構造を形成しており、神経内分泌腫瘍と診断した。免疫染色を追加するとシナプトフィジン、クロモグラニンA、CD56が全て陽性であり、神経内分泌腫瘍に矛盾しなかった(図2)。核分裂像からは神経内分泌腫瘍(G2)と判断した。また、リンパ節転移や静脈浸潤を認めた。最終的な診断は胃神経内分泌腫瘍(pT2,ly0,v1;pN1.cT2N1M0,stageⅢB)として、術後経過観察していた。術後3年間は再発を認めなかったが、術後3年目に胃吻合部下付近に45mm大の腫瘤性病変が認められ、肝内には多数の転移病変も伴っていた。神経内分泌腫瘍の再発を疑い、ソマトスタチン受容体シンチグラフィーを撮影した。シンチグラフィーでは腫瘍に集積し、神経内分泌腫瘍が強く疑われた(図3)。確定診断のため、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)で組織採取した。組織所見は乳頭状や胞巣状に増殖する腫瘍細胞が認められ、神経内分泌腫瘍と診断した(図4)。その後は転移再発した神経内分泌腫瘍に対してランレオチドを投与している。【既往歴】糖尿病、高血圧、甲状腺機能亢進症【生活歴】喫煙、飲酒ともになし【家族歴】娘が膠原病(図1)上部消化管内視鏡所見A:胃前庭部大弯の10mm大の隆起性病変B:中央はさらに隆起しており、NBI拡大観察では腺管構造は有していない

元のページ  ../index.html#69

このブックを見る