南予医学雑誌20巻
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-64-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 本症例では、ポラプレジンク内服に加え、栄養機能食品(亜鉛)を食事の代替としたことにより、1日銅0.04mg、亜鉛46mg(上限値35mg)と亜鉛の過剰および極度の銅不足状態を招いた。体内の銅プールの著しい枯渇に加え、亜鉛含有製剤の使用による銅吸収障害が関与し、その状態を1年継続した事が今回の発症の誘因の一つと考えられる。 入院前の1~2年で食事中のむせ込みや痰量が増加し、食事摂取量および摂食嚥下機能の低下が起こっている。これは既往にある虚血性脳梗塞後遺症や認知症の進行に加え、銅欠乏症の症状である神経障害が関与した可能性も考えられる。 ポラプレジンク内服と栄養機能食品(亜鉛)の中止、及び胃瘻造設による経腸栄養法により、銅0.96mg、亜鉛9.6mg(銅亜鉛比1対10)、必要栄養量・ビタミン・ミネラルなどバランスの整った内容で経腸栄養管理を行った結果、退院2ヵ月後には白血球減少症、貧血、栄養状態の改善を認めたと考えられる。考   察 食事の代替として栄養機能食品(亜鉛)を使用する場合は、必要に応じてビタミン・ミネラル・微量元素等の栄養素や水分を補給する必要がある。また、亜鉛含有製剤内服中において、栄養機能食品(亜鉛)の使用や提供量については、1日の摂取目安量を確認したうえで継続的に検討し、副作用が起こらないよう考慮すべきである。結   語1)日本人の食事摂取基準 2015年版,第一出版株式会社,Ⅱ各論,1-7ミネラル/微量ミネラル,亜鉛,銅296-3022)栄養学と食事療法大事典,株式会社ガイアブックス,2015年 第3章 摂取:栄養とその代謝3)亜鉛欠乏症の治療指針 2018 編集:一般社団法人日本臨床栄養学会(日本臨床栄養学会誌 Vol.40 No.2別刷)参 考 文 献

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