南予医学雑誌20巻
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-60-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 2015年版日本人の食事摂取基準において、70歳以上の女性で銅の推奨量は0.7mg、亜鉛推奨量は7mgである(銅亜鉛比1対10)1)(表1,2)。入院前の施設での推定摂取量は、銅0.04mg、亜鉛46mg(上限値35mg、銅亜鉛比1対1150)であった。 食事の代替として栄養機能食品(亜鉛)を使用する場合は、必要に応じてビタミン・ミネラル・微量元素等の栄養素を補給することが重要である。また、亜鉛含有製剤内服中において、栄養機能食品(亜鉛)の使用や提供量については、1日の摂取目安量を確認したうえで継続的に検討する必要がある。 今回、ポラプレジンク内服に加え、栄養機能食品(亜鉛)が食事の代替とされ、亜鉛の過剰および極度の銅不足状態を1年継続したことによる銅欠乏性貧血が、経腸栄養によって改善した1例を経験したので報告する。序   言【患 者】77歳女性【現病歴】X年7月30日A内科クリニックより紹介。特別養護老人ホームB入所中、8カ月間にHb12.7g/dL(X-1年11月)、Hb9.9g/dL(X年3月)、Hb7.0g/dL(X年7月)の低下を指摘され、精査目的で当院内科を受診した。 【既往歴】虚血性脳梗塞、てんかん、味覚異常、貧血、認知症【アレルギー】なし【内服薬】クロピドグレル(中止中)、ファモチジン、バルプロ酸、酸化マグネシウム、ヨーデル、プロマック(150mg/日※亜鉛として34mg)、ラキソデート症   例※内服薬の副作用の可能性を考慮し中止(X年8月)【入院時現症】身長154cm、体重40.5kg、BMI17.1kg/m2、体温37.5℃、血圧138/105mmHg、脈拍93/分・整、SpO2 97%(room air)、心音:整・雑音なし、肺音:清、腹部:平坦・軟【来院時検査所見】血液検査(表3)では、亜鉛-S150µg/dLと軽度高値、銅2µg/dL以下の低値を認めた。また鉄63µg/dLと正常値に対し、Hb6.9g/dLと鉄欠乏を認めない貧血、WBC1.67×103/µと白血球減少、好中球減少を認めている。【入院までの経過】 本症は、X-2年12月19日特別養護老人ホームB入所し、施設で調理されたミキサー食を提供の8~10割摂取していた。その後徐々に摂取量が低下してきたため、X-1年5月29日ミキサー食を半量の提供へ減量し、栄養機能食品(亜鉛)の添加で必要栄養量の充足がおこなわれた。 X-1年7月13日ミキサー食が中止となり、食事の代替として栄養機能食品(亜鉛)のみで栄養管理するようになった。ここで使用された栄養機能食品(亜鉛)の1日摂取目安量は1Pであったが、実際使用された量は2/3P×3食である。他、エネルギー補給用水分補給ゼリー毎食1本を含む全体の栄養量は、1180kcal、たんぱく質28g、銅0.04mg、亜鉛46mg(プロマック34mg含む)となった。この状態から8カ月経過したX年3月にはHb9.9g/dLと低下、X年7月にはHb7.0g/dLを認めた。A内科クリニックより貧血を指摘され、精査目的のため当院内科受診となった。栄養機能食品(亜鉛)のみで管理し約1年が経過している。 X年7月30日消化器内科受診の翌日、血液内科へ紹介となり、亜鉛過剰および銅欠

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