南予医学雑誌20巻
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-4-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 原発30km圏内にある医療機関は原子力災害時の避難計画策定が求められている。計画策定上、入院患者の総数のみならず、要担送患者の比率や治療を打ち切り自力避難したい患者の比率も、避難を遂行する上で重要な要素となる。今回、2014年7月11日に発災、同日原子力緊急事態宣言が出たと仮定し、入院患者や家族が避難についてどう考えるかを調査した。 その結果、当院で病院避難を選ぶのは入院患者の約64%に当たる、107人程度とみられた。この中には必ずしも重篤な病状でなく独歩で移動できる患者も含まれるが、多くは家族や地域の人々と一緒に避難することが難しい人々である。逆に、治療継続すべき病気があったり、自力での移動が難しい患者の中にも、家族のサポートにより速やかに避難したいと考える人がいた。これは病院避難において、搬送手段の確保が遅れ、避難時期の目途が立たない可能性があることや、小児や重篤な患者を除き家族と一緒に避難することが難しいことなどを病院側から説明したことを、患者や家族が考慮した結果であろう。 家族の意思で自力避難する患者は自力避難を選んだ59人のうちの1/3程度となった。災害時の混乱により、これらの患者の一部では家族に連絡することができない、あるいは家族が当院へ迎えに寄ることがで考   察きない状況も考えられる。半数程度の患者がこのような状況になると仮定すると、これらの、実数で10人程度の患者は病院避難団に追加して考える必要がある。 伊方原発30km圏内の入院患者が当院の調査結果と同じ比率で病院避難を選ぶとすると、入院患者の避難に大型バス約730席及び440人分の臥位での搬送手段を要するとみられる。これらの避難が一斉に実施される可能性は少ないが、ピストン搬送をするにしてもどの位の規模の搬送手段が必要になるかの判断材料として、今回の調査結果を生かすことができる。また、病院避難団として避難した患者の大部分をまずは搬送先地域の医療機関に収容することが必要になるとみられる。愛媛県中央部(中予)さらには東部地区(東予)の医療機関において、これらの患者をどのように分担収容するか7)、できれば事前に検討する必要があるのではないだろうか。 以上、原子力災害時の入院患者避難が必要になった場合に、どの位の患者が自力避難、あるいは病院避難団として避難するかを、実患者または家族への聞き取り調査により計算した。これらの結果は当院あるいは地域(伊方原発30km圏内)の避難計画を立てる上で参考になると考えられる。 本稿の要旨の一部は第20回日本集団災害医学会総会(2015年2月26日、東京)において発表した。(表2)患者・家族への説明内容  (2)救護区分と搬送方法

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