南予医学雑誌20巻
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-51-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 骨盤放線菌症はActinomyces属の嫌気性グラム陽性桿菌による感染症で、慢性化膿性肉芽腫性病変を形成し、組織破壊的に浸潤するためしばしば悪性腫瘍と誤認されやすい。今回、骨盤放線菌症と思われる骨盤内腫瘤により水腎症をきたした1例を経験したので報告する。 症例は62歳。右下腹部痛と発熱を主訴に近医を受診し、腹部単純CT検査で右付属器領域の腫瘤性病変、同部位より頭側の尿管拡張と右水腎症を認め、右卵巣癌の尿管浸潤が疑われ当科紹介受診した。20年以上前にIUDを留置して以降、放置していた。 来院時、経腟超音波断層法で右付属器領域に充実部を伴う30㎜大の腫瘤性病変と子宮内にIUDを認めた。同部位に圧痛を認め、CRPも上昇しており付属器炎が考えられた。子宮頸部擦過細胞診と腟分泌物の検鏡から放線菌が検出され、放線菌による付属器膿瘍の診断のもとAmpicillin sodium(ABPC)点滴静注を開始した。治療開始後、臨床症状は軽快し血液検査所見の改善を認めた。治療開始後8日目よりAmoxicillin (AMPC)の内服へ切り替え、以降は外来管理とした。水腎症に関しては治療により付属器腫瘤が縮小するとともに軽快した。抗菌薬は合計半年間の投与で終了し、その後も再燃を認めていない。受稿日 令和1年8月16日受理日 令和1年9月30日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1市立宇和島病院 産婦人科 安岐 佳子市立宇和島病院 産婦人科要    旨Key Words:骨盤放線菌症、放線菌症、骨盤内炎症性疾患、子宮内避妊具安 岐 佳 子,中 橋 徳 文,清 村 正 樹,青 石 優 子,今 井   統,井 上 翔 太骨盤放線菌症が疑われた骨盤内腫瘤により水腎症をきたした症例症 例 報 告

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