南予医学雑誌20巻
47/88

-45-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 β遮断薬は心筋梗塞や心不全の生命予後を改善させるが,単独よりも運動療法を併用することでその効果は大きく向上する1) 。運動療法を含めた心臓リハビリテーション(心リハ)は急性心筋梗塞後の運動耐容能の改善や死亡率,再発率の減少が報告されており,退院後も生活習慣の修正を含めた二次予防の重要性が強調されている2)。より効果的なフォローを行うには心エコーや血液所見だけでなく,心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise test;CPX)が重要である。 CPXは生命予後に関連する嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold;AT)および最高酸素摂取量(peak oxygen uptake;Peak VO2)の評価だけでなく,運動処方や日常生活上のリスク管理,薬物療法や心リハの治療効果の判定が可能である3)。ガイドラインでの推奨クラスはⅠであり,少なくとも退院前には行うことが望ましい。  当院では今日まで外来心リハは実施していなかったが,2018年より外来心リハを開始した。本症は,急性心筋梗発症後にうっ血性心不全を合併,退院時のCPXで著明な運動耐容能の低下を認めた。そこで3か月の外来心リハを導入し,運動耐容能の大幅な改善が得られたので報告する。【症 例】70歳台の男性,身長159.6㎝,体重62.3㎏,BMI24.5 ㎏/m2.【主 訴】胸痛 ICUにて第2病日より心リハを開始した。ドブタミン,フロセミド投与下で血行動態は安定していたため,日本心臓リハビリテーション学会の標準プログラム4)に従い,段階的に運動量を増加させた。加え,早期よりレジスタンストレーニング5)を導入し,500m歩行獲得後は自転車エルゴメータを使用した有酸素運動を開始した。退院時の身体機能評価を表1に示す。退院前に行ったCPX(図1)でAT V・O2 9.8ml/min/kg,Peak V・O2 11.1 ml/min/kg,Peak O2 Pulse 4.5ml/beats, V・E vs. V・CO2スロープ 27.0, ΔV・O2/ΔWR 5.6ml/min/wattと低値を示した(表2)。は じ め に症 例 紹 介入院中の心臓リハビリテーション【既往歴】40歳まで喫煙,7年前に心筋梗塞【現病歴】2か月前から我慢できる程度の胸部違和感を自覚していたが,本日11時半ごろから前胸部に焼けつくような痛みを自覚。1時間以上持続するため当院へ救急搬送となる。【血液所見】NT-proBNP 69.74 pg/ml, Peak CPK 3808/MB 359 IU/l.【心電図所見】洞調律,Ⅱ,Ⅲ,aVFでややST上昇【心エコー所見】左室駆出率(Simpson法) 66.6%,E/e’18.2,僧帽弁逆流 Ⅱ~Ⅲ°,三尖弁逆流 Ⅱ°,三尖弁圧較差 49 mmHg,拡張障害を認めた。 冠動脈造影検査:#11に100%の閉塞を認め経皮的冠動脈形成術を施行。術後,ICU入室となる。 なお,本誌掲載にあたり,本人に対し十分な説明を行い同意を得た。

元のページ  ../index.html#47

このブックを見る