南予医学雑誌20巻
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-1-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 原発30km圏内の病院には原子力災害時の避難計画策定が求められている。計画策定上、入院患者の総数のみならず、要担送患者の比率や治療を打ち切り自力避難したい患者の比率も、避難遂行上 重要な要素となる。今回、2014年7月11日に発災、同日原子力緊急事態宣言が出たと仮定し、入院患者や家族が避難についてどう考えるかを調査した。 方法:緊急事態宣言(仮想)時点の入院患者総数と救護区分を調べた。また患者と家族に面談または電話で、上記宣言の時点で直ちに自主避難するか、遅れて病院の避難団として避難するかを選んで貰った。 結果:訓練時点の入院患者数は167人(救護区分別には独歩が34.1%、護送41.9%、担送24.0%)。病院による避難を望んだ者は全体では107人(64.0%)で、独歩患者の54.4%、護送患者の60.0%、担送患者の85.0%であった。 2013年の調査による伊方原発30km圏内の入院患者にこれらの比率をあてはめると、400人以上の患者が救急車などの、臥位での搬送手段を必要とし、また1100人以上が避難先で入院することを希望すると推察された。 考察および結論:今回の調査結果は、原子力災害時の入院患者避難に際して、必要となる搬送手段やその規模、収容病床数などを割り出す手がかりになると考えられる。受稿日 平成31年3月29日受理日 令和1年7月2日連絡先 〒796-8502 愛媛県八幡浜市大平1-638市立八幡浜総合病院 麻酔科・救急科 越智元郎1 )市立八幡浜総合病院麻酔科・救急科2 )同看護部、救急・災害対策室   3 )同左(2015年3月まで在籍)要    旨Key Words:原子力災害、入院患者避難、伊方原発、シミュレーション越 智 元 郎1),川 口 久 美2),石 見 久 美2),宮 谷 理 恵3)伊方原発30km圏内からの入院患者避難シミュレーション―実入院患者および家族からの聞き取り調査をもとに―原   著

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