南予医学雑誌20巻
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-25-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 コントロール群では、Grade1の末梢神経障害の出現が多くなったのが薬剤投与3回目からで、5回目には既にGrade2になった患者もおり治療回数と共に出現・増悪していた。グローブ圧迫群では、Grade1の末梢神経障害の出現が多くなったのが薬剤投与4回目であり、Grade2となったのは9回目以降であった(図2)。一重の簡便なグローブ圧迫療法ではあるが、末梢神経障害はGrade2に悪化した患者は少なく、Grade2に悪化した時期も有意に遅くなっていた(図3)。また、手と足で末梢神経障害の程度に差があるかも検討した。グローブ圧迫群では足の神経障害が手より強いと感じた患者はなく、足を圧迫することで足の神経障害は改善されていた(図4)。結   果 パクリタキセルは癌化学療法におけるkey drugの1つであるがその副作用として末梢神経障害がある。化学療法の有害事象の多くは支持療法などの進歩で改善されてきたが、末梢神経障害に対しては有効な予防方法や治療法が確立されておらず、ほとんどの患者で治療回数と共に出現・増悪する可能性が高い。また一度出現すると薬剤を中止しても残存することが多く、苦痛が大きいだけでなくADLやQOLを低下させる要因となっている。最近、手足の末梢神経障害の予防としてフローズングローブによる冷却療法1,2)やサージカルグローブによる圧迫療法3,4)が検討され効果が明らかになってきている。我々は末梢神経障害を防止できないか、簡便な方法でのグローブ圧迫療法の有効性を検討した。 対象は乳癌の術後補助・再発治療のためパクリタキセルによる化学療法を導入した患者とし、毎週投与のPTX、HER+PTX、Bev+PTXのレジメンで検討した。2017年3月よりグローブ圧迫療法を導入し、それ以前のhistorical controlと比較検討した。グローブなし(コントロール群)2015年4月~2017年2月患者14名  年齢:31歳~78歳(年齢中央値57歳)グローブ圧迫療法実施(グローブ圧迫群)2017年3月~2019年6月患者34名  年齢:34歳~80歳(年齢中央値64歳) グローブ圧迫の方法はコスト面や患者への負担を考慮しより簡便な方法とした。通常業務で使用しているニトリル手袋を、患者の手の大きさによりXXSまたはXSサイズのものを1重で、制吐剤投与時から薬剤終了し抜針までの間、約90分手と足先に着用した(図1)。手背に静脈路確保を行った場合は、反対側のみ手袋を着用した。末梢神経障害はCTCAE ver. 4.0で毎週看護師1名が実施評価し、主要評価項目はCTCAEでGrade 1または2の末梢神経障害が出現する時期とした。統計はstudent-TでP<0.05を有意とした。は じ め に対   象方   法

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