南予医学雑誌20巻
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1.対象患者の背景 期間中のICU入室患者は326名であった。このうち115名に人工呼吸管理を行い、調査対象となったのは27名であった(人工呼吸管理が短期間のため調査対象に該当しない症例が多数を占めた)。患者の性別は男性23名、女性4名であった。平均年齢は65.9±17.0歳、診療科の内訳は内科が30%、脳神経外科が26%、整形外科が19%、外科が11%、麻酔科が7%、心臓血管外科・耳鼻咽喉科がそれぞれ4%ずつであった。重症度を示すAPACHEⅡスコアは19(6~40)[中央値(最小~最大)、以下同じ]点(図1)、ICU入室日数は11(5~29)日、人工呼吸管理日数は9(4~29)日、のべ人工呼吸管理日数は291日であった(図2)。挿管場所の内訳は救急外来・手術室がそれぞれ30%ずつ、ICUが26%、HCUを含む病棟が15%であった。挿管経路は経口挿管が23名、経鼻挿管が4名であった(図3)。2.VAPバンドル実施状況と、実施できなかった理由1)各勤務帯での口腔ケア  のべ人工呼吸管理日数291日中275日実施できており実施率は95%であった。実施できなかった理由としては2つ挙がっており、[循環動態の不安定](58%)が最も多く、他方は[医療スタッフ側の要因(人手が不足していた、当該勤務帯が入室直後のため他の処置を優先し実施できなかった等)](42%)であった。2)30度以上、および累計4時間/日以上の頭部挙上  291日中117日実施しており実施率は40%であった。実施できなかった理由で最も多かったのは[治療上の制限]結   果-20-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020(39%)であり、[循環動態の不安定](37%)が続いた。他にも[呼吸状態の不安定](9%)、[頭部挙上よりも完全側臥位などの呼吸リハビリテーションを優先](7%)、[患者の協力が得られない](5%)といった理由があった。なお、最も多かった[治療上の制限]の内訳は、脳ドレーン(41%)、鼠径に留置されたカテーテル類(31%)、安静を要する病態(25%)、頭蓋直達牽引(3%)であった。3)概日リズム導入(RASS -1~0)  291日中132日実施しており実施率は45%であった。実施できなかった最大の理由は[循環動態の不安定](47%)であり、次いで[導入が不要であると判断された](35%)が続いた。[導入が不要であると判断された]理由は、安静を要する病態(67%)、筋弛緩薬の使用(23%)等が挙げられており、他には[日中の休息を優先した]といった理由があった。4)閉鎖式吸引の実施  291日中281日実施できており実施率は97%であった。5)カフ圧管理  実施率は100%であった。6)VAPバンドル5項目完全実施率  291日中88日(30%)において5項目完全に実施した(図4)。7)VAP発生率  対象期間中ICUにおいて1名にVAPの発生を認めた。VAP発生率は2.6件/1,000人工呼吸器使用日であった。日本環境感染学会によるサーベイランスのデータでは、参加77施設の併合感染率は3.2件(中央値2.7件)/人工呼吸器使用日であった2)。

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