南予医学雑誌20巻
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-19-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)は気管挿管下の人工呼吸管理により発症する肺炎で、重要なデバイス関連院内感染である。集中治療領域におけるVAPの発生は死亡率・在院日数・医療費のいずれをも増加させることが知られており、その発生予防が重要である1)。VAPの予防策は単独での適用ではなくバンドリング手法が有用とされており、当院ICUでもガイドラインに基づくVAPバンドルを導入している。また、院内のシステムによりVAPのサーベイランスを実施している。 一方、VAPバンドル遵守率の集計は行ってきたが実施状況の詳細については明らかになっていなかった。そこで、VAPバンドルの実施状況を調査し、実施を妨げている要因を把握することでVAPバンドルの実施率向上につながると考え、この研究に取り組んだ。バンドリング手法:複数の予防策をひとまとめにして適用する手法。VAPバンドル:VAP予防バンドル。当院ICUでは①各勤務帯での口腔ケア②30度以上、かつ累計4時間/日以上の頭部挙上③概日リズム導入(RASS-1~0)④閉鎖式吸引の実施⑤カフ圧管理の5項目としている。RASS:Richmond Agitation-Sedation Scale鎮静深度を-5~+4の10段階で評価するスケール。0は意識清明で落ち着いている状況を示す。CPOT:Critical-Care Pain Observation Tool表情、身体の動き、人工呼吸器との同調性、筋緊張をスコア化し痛みを評価するツール。序   言用語の定義1.対象 2017年4月1日から2018年3月31日までの期間に当院ICUへ入室し気管挿管下の人工呼吸管理を行った患者とした。熱傷・15歳未満の小児・人工呼吸管理期間が48時間未満のものはいずれも対象外とした。2.調査内容1)対象患者の背景  対象患者の属性(性別、年齢、診療科、疾患)、治療、重症度(APACHEⅡスコア)、ICU在室日数、人工呼吸管理日数、挿管場所・経路。2)VAPバンドル実施状況  VAPバンドル記録用紙・診療録・看護記録より以下の項目を集計した。日々のVAPバンドル5項目それぞれにおける実施の有無、実施できなかった項目があった場合その理由、5項目すべて実施できた日数、VAP発生の有無。3)VAP発生率3.データの集計、分析 量的データはExcelにより集計した。VAPバンドルが実施できなかった理由に関しては類似した理由ごとにカテゴリ化し集計した。4.倫理的配慮 本研究は所属施設の臨床研究審査委員会の承認を得て実施した(承認番号184-153)。対象者のデータは要配慮個人情報として取り扱った。対象および方法SAT:Spontaneous Awakening Trial鎮静薬を中止または減量し、自発的に覚醒が得られるか評価する試験のこと。

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