南予医学雑誌20巻
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-15-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020頻度が増加したという報告がある。4-7)気圧の変化に伴う疾病発症の原因の一つとして、自律神経系の関与があるかもしれない。基礎研究において気圧の低下により、ラットの血漿中ノルアドレナリン濃度の増加や8)、血圧、心拍数の増加がみられたという報告がある。9)本研究においても、消化器疾患を除くすべての疾患群において、受診日の平均気圧は日本の平均気圧(1013hPa)よりも低かった。一方で消化器疾患においては、他疾患群と比べると有意に気圧の高い日の受診者数が多かった。原因ははっきりしないが、これまでに気圧が高い日ほど、上部消化管出血による外来受診が多かったという報告もある。7) 前日との気圧差では、呼吸器疾患と整形外科疾患において、前日よりも低い気圧となる日に受診者数が多い傾向がみられた。ただし、前日との気圧差の変動は呼吸器疾患で-0.2 hPa、整形外科疾患では-0.1 hPaと少なく、わずかな気圧の変動においてもこれら2疾患群の病状が影響している事が示唆された。2.季節間での受診疾患の相違 図1に示すように、今回の検討では、季節の変わり目の時期や12月、1月の冬季に受診者数が多い傾向を認めた。気象の変化によって症状が出現する、あるいは悪化する疾患の総称として、気象病という疾患概念があり、その原因として気圧や気温、湿度などの変化に人体が対応しきれずに発症すると言われている。1)本研究においても、表6にもあるように、四季により、気圧、気温、湿度などに統計学的な有意差を認めており、気象条件が、四季の病院受診者数に変化を認めた原因の一つではないかと思われた。また近年、人口の高齢化に伴い、高齢者に多い肺炎、気管支炎などの呼吸器疾患、心疾患、脳血管疾患などによる死亡は冬季に集中する傾向があるという報告もある。1)  各疾患群で検討してみると、消化器疾患と整形外科疾患で季節間での受診者数の違いが見られた。消化器疾患に関しては冬季に多く救急外来への受診が見られた。これは先に述べたように、気圧が原因の一つとして影響しているのかもしれない。今回の検討では、他疾患群と比較して、消化器疾患で受診した日の気圧が有意に高く(表 2)、また、表6に示すように、冬季に最も気圧が高かった。 整形外科疾患による救急外来受診者数においては、春に多い傾向が見られた。本研究では整形外科疾患による救急受診者のうち、大多数が骨折による受診であった。これまでに、骨折で外来受診した症例の血中ビタミン濃度の低下を季節ごとに検討した結果、春に低かったという報告もある。10)3.本研究の限界 本研究の検討にはいくつかの限界がある。①レトロスペクティブな検討であること、②1年間の検討であり、症例数が少ないこと、③愛媛大学医学部附属病院が3次救急のみ行っており、1次、2次救急疾患が含まれていないため、疾患に偏りがあること(単施設のみの検討であること)、④平日の日中に救急受診した症例が含まれていないこと、④気象データとして松山市のデータを使用しており、愛媛県内の地域毎の詳細なデータを用いていないこと、⑤臓器別で疾患を大まかに分類しており、疾患毎の詳細な検討は行われていないこと、などである。

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