南予医学雑誌20巻
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-8-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020 気象要素は、直接的、間接的に人間の健康状態に影響を与えている。実際に気象の変化によって症状が出現する、あるいは悪化する疾患のことを総称して気象病、季節病と最近では呼ばれており1)、その種類は多岐にわたる。 日本には、春、夏、秋、冬の四季がある。しかし、南北に細長い日本列島においては、季節による気象条件は地域によって大きな違いがある。愛媛県の気象特性については松山地方気象台のホームページに瀬戸内海地域の地理的な影響を受けるため、降水量は比較的少なく晴天が多く、相対的に乾燥しているとされている。2)愛媛県における気象と疾病の関連性については我々が調べた限りではこれまでに報告が見られなかった。 今回の研究では、愛媛大学医学部附属病院の救急外来を受診した症例の、疾患と気象(天気・気圧・気温・湿度)の関係を検討した。また、季節ごとの各疾患群の受診者数の違いを調べ、疾患と季節との関連性についても検討した。1.対象症例 2015年1月1日から2015年12月31日までに愛媛大学医学部附属病院の夜間・休日の救急外来を受診した症例をカルテベースで検索した。同一患者が同日に受診された際も対象症例とした。序   言対象および方法 産科疾患による救急外来受診の症例、および15歳未満の症例は小児の範疇と判断し除外した。2.気象要素について 気象庁のホームページ3)より、愛媛県松山市の該当する期間の天気(晴・曇・雨)・気圧・気温・湿度を日ごとに検索した。また気圧、気温、湿度については前日との差を算出した。対象期間中に外来受診者がいなかった日(6日間)は、今回の検討から除外した。 季節は冬季(12-2月)、春季(3-5月)、夏季(6-8月)、秋季(9-11月)と定義した。3.疾患群 各症例の診断病名として、救急外来受診時に診断された病名をカルテより抽出し、以下に示す疾患群に大別した(①自己免疫疾患、②精神疾患、③血液疾患、④皮膚科疾患、⑤婦人科疾患、⑥泌尿器科疾患、⑦神経・脳疾患、⑧整形外科疾患、⑨呼吸器疾患、⑩眼・耳鼻・口腔内疾患、⑪心・血管疾患、⑫消化器疾患、⑬その他)。4.統計手法 データは中央値(最小値 –最大値)で表した。対象疾患群、非対象疾患群の比較はMann-WhitneyのU検定およびカイ2乗検定を行った。また季節間の比較はKruskal-Wallis検定を行った。P < 0.05のとき統計学的に有意であると判断した。 本研究は、愛媛大学医学部附属病院の倫理委員会の承認を得て実施した。

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