南予医学雑誌19巻
86/92

南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-84-解除となった。 その後も別の場所に移動し復旧活動は続いた。午後7時,応援チームを見送り私たちは解散となった。 翌日も復旧作業は行われ,この日の解散を以て第1分団としての活動は終了となった。 以上が私の経験した西日本豪雨災害である。 この経験を振り返り私が不思議に感じたことはふたつある。 ひとつは,明らかに危険な状態にもかかわらず,避難の呼びかけに応じない方が多数いたことである。 この件に関しては後日,正常性バイアスが関係しているという話を聞いた。 正常性バイアスとは,人間が予期しない事態に対峙したとき,「ありえない」という先入観や偏見が働き,物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働きであり,ストレスを感じた時に心の平安を守るための防御作用でもある。しかし災害などに直面すると,この防御作用が過剰に働き,非常事態をすばやく認識できない危険性が報告されている。 実際避難に応じなかった方が全て正常性バイアスによるものかどうかは分からないが,定期的に巡回を行わなければならない私たちにとっては,大きな負担となった。 もうひとつは,私自身が活動中に空腹や疲労を感じなかったことである。このことに関して私は,災害による興奮状態が影響しているのではないかと考えている。空腹や疲労だけでなく睡眠にも影響があり,発災から3日間ほどは一睡もできなかった。その後徐々に眠れるようになっていったが,結局,熟睡できるようになるまでには1ヵ月ほど時間が掛かった。(図10) 参集した津島方面隊(図11) 土砂撤去を行う団員(図12) 応援チームが持参した重機

元のページ  ../index.html#86

このブックを見る