南予医学雑誌19巻
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南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-6-(図6)看取り場所協働を強化したことが考えられる。その結果,患者・家族が安心して可能な限り自宅で質の高い生活を送ることができ,看取り率の増加につながったと考えられる。 このことから,バックベッド登録はしても,在宅チーム医療の連携が強化され,患者の苦痛症状が安定していれば,最期まで自宅で過ごすことが可能であり,在宅支援診療所・訪問看護ステーション等地域の在宅医療・介護・福祉と連携することで,当地域でも「在宅緩和ケア」が行えることが明らかになった。今後の展望 平成29年度の「人生の最終段階における医療に関する意識調査」において,末期がんと診断されて状態が悪化し,今は食事がとりにくく呼吸が苦しいが,痛みはなく,意識や判断能力は健康な時と同様に保たれている場合,最期を迎えたい場所は一般国民の69.2%が自宅と答えている2)ことから,多くの国民が,上記のような状態であれば,自宅で過ごしたいと考えている。また,平成30年3月策定の愛媛県がん対策推進基本計画においても,「がんとの共生」を全体目標に掲げ,がん患者が住み慣れた地域社会で生活をしていく中で,必要な支援を受けることができる環境整備を目指すこととしている。 当院で,2017年1月1日~12月31日に,年間新入院患者数に占めるがん患者の割合は19.3%(1,977人),院内外来がん患者延べ数は16%(38,109人),院内死亡がん患者数は29%(154人)と院内全体から見ると,がんの割合は多いとは言えない。しかし,諸外国では以前より「緩和ケア」はがんだけに留まっておらず,日本緩和医療学会では「緩和ケアとは,重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などの様々なつらさをやわらげより豊かな人生を送ることができるように支えていくケア」としている。平成30年度の診療報酬改定で,緩和ケアの対象に心不全も追加され,国内においても「緩和ケア」は,がん以外

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