南予医学雑誌19巻
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南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-74-低下していることが判明した。入院後15日目に頭部MRIを再検査したところ,入院時に認めた異常所見は消失していた。(図2)経口チアミン剤内服は継続し,以降症状の再発はみられず経過は良好である。【考 察】 本症例では,以下2点が考えられた。先行する明らかな消耗病態やアルコール摂取歴がなくても極端なダイエットにより,Wernicke脳症が誘発され得る。詳細な病歴聴取と眼球運動を含めた丁寧な身体診察がWernicke脳症を疑う上で重要である。 Wernicke脳症は,チアミン欠乏により発症する急性の代謝性脳症である。アルコール常飲者に多いとされてきたが,近年,非アルコール性Wernicke脳症の存在も認知されるようになっている。本症例も飲酒歴のない非アルコール性Wernicke脳症であった。本症例発症の主な原因の一つとして,極端なダイエットが考えられるが,10日間という短期間で発症している。チアミンの体内貯蔵量は,25-30mg程度とされており5),チアミンを全く摂取しない場合,2-3週間でチアミン欠乏状態に陥る6)といわれている。本症例では食パン1枚を毎日食べており,推定でチアミン約0.245mg(チアミン0.07mg/食パン100gあたり7))は体内に取り込まれ,全く摂取していなかったわけではない。そのためチアミンが欠乏する他の要因について検討してみた。 まずコーヒーの常飲に関してだが,コーヒーに含まれるクロロゲン酸類がチアミン入院時入院後15日目(図2)頭部MRI検査FLAIR画像入院時にみられていた中脳水道,第3脳室,側脳室の高信号域は消失した。

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