南予医学雑誌19巻
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井上:宇和島地区在宅緩和ケア推進モデル事業について南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-5-していても,臨終が近くなると入院を余儀なくされていたケースがあり,在宅医療依頼側の医療者が,何のために在宅医療に繋いだのか分からないと困惑していたケースも少なくはなかった。そのため,当院が宇和島地区モデル事業のバックベッドを引き受ける体制を整備する際,院内の医師の一部から,救急患者がさらに増えるのではないか,命を助けることを優先する病院で看取りの入院を受け入れるのは,当院の役割ではないのではないかとバックベッドを受けることに消極的な発言が聞かれた。そのため,院内の体制を整備するにあたり,在宅緩和ケアコーディネーター,院内緩和ケアチームと協議を重ね,在宅療養支援チームとの連絡・連携体制を整備した。当院にバックベッド登録を希望する患者に対しては,事前に家族と共に外来受診し,今後の療養方法,在宅チームとの連携方法について主治医・看護師と話し合うこととした。院内の職員に対しては,院内研修会,医局会を通して周知を行った。そして,個人カルテ掲示板に登録日,在宅支援診療所と訪問看護ステーション名を記載し,関係医療機関が分かりやすいようにした。緊急入院数,在宅看取り率の推移 2016年度登録者6名,死亡者6名(在宅死亡者数2名),在宅看取り率は33.3%であったが,2017年度は,年度末集計で登録者28名,死亡者数22名(在宅死亡者数13名)在宅看取り率59%に増加した(図6)。当院からの紹介患者数は21名で全体の75%を占めており,バックベッド登録者数は23名であった。そのうち,バックベッドに入院となった患者は4名であった。4名のうち2名の入院理由は長期間療養による家族の介護疲労で他の2名は,症状コントロールが困難な状況であった。看取り率が上がった背景には,在宅支援診療所医師と訪問看護師,薬剤師をはじめとする医療従事者とケアマネージャー,福祉用具担当者など生活を支える介護・福祉職者の在宅チームが速やかに情報共有を行い,連携・(図5)バックベッド病院市立宇和島病院23名

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