南予医学雑誌19巻
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風谷、他:肺吸虫症との関連が示唆された収縮性心膜炎の1例南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-65- 本症例では,採取された心膜からは虫卵の検出はできず,その他の特異的な所見がなく,病因を特定することはできなかった。抗寄生虫抗体スクリーニング検査でウエステルマン肺吸虫症の感染が陽性であり,慢性期である可能性が示唆されている。本症例では,CPの原因として過去に胸腔内に寄生した肺吸虫が心膜に慢性的な炎症を及ぼしたために起きた可能性,もしくは死滅した虫体から放出された虫体抗原が心膜の石灰化に寄与した可能性が考えられた。結 語 収縮性心膜炎の原因として,肺吸虫症の関連が示唆された1例を経験した.参考文献1)  Lilly LS,川名正敏:ハーバード大テキスト心臓病の病態生理。メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2017:pp367.2)  矢崎義雄:内科学。朝倉書店,東京,2013:pp767.3)  Long DL:ハリソン内科学。メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2013:pp1536。4)  松峯宏人,荒木国興:左右交互に繰り返す胸痛にて発症し,両側胸膜病変を呈した宮崎肺吸虫の1例。日内会誌1985;74:597-605.5)  Henry TS, Lane MA, Weil GJ, et al. Chest CT features of North American paragonimiasis. AJR Am J Roentgenol 2012;198:1076-1083.6)  小沢由理,鈴木恒雄,大谷直史,他:多彩な症状を呈した宮崎肺吸虫症の1例。医療1992;46:634-638.7)  Azher M1, el-Kassimi FA, Wright SG, et al. Exudative polyserositis and acute respiratory failure following praziquantel therapy. Chest 1990; 98: 241-3.

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