南予医学雑誌19巻
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南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-62-系酵素の上昇,NT-ProBNPの上昇を認めた。好酸球の上昇は認めなかった。便中卵は陰性であった。三連痰とT-SPOTは陰性であった。各種自己抗体は陰性であった(表1)。【臨床経過】第1病日から心拍数コントロール目的でランジオロール塩酸塩を開始し,第2病日から降圧とうっ血解除のためにベニジピン,アゾセミド,スピロノラクトン, 心内血栓形成の予防目的にエドキサバンの内服を開始した。第3病日には心拍数は約80/分で安定化したため,ランジオロール塩酸塩を終了し,ビソプロロールの内服を開始した。治療開始後,ビリルビン値と肝胆道系酵素値は改善し,両下腿浮腫も改善した。第10病日に心臓カテーテル検査を施行した. 冠動脈造影検査では冠動脈の器質的有意狭窄は認めなかった。Swan-Ganzカテーテル検査では右室圧と左室圧の拡張早期におけるdip & plateauを認め,また両心室の拡張期血圧は上昇しており,その差は5mmHg未満であった。平均肺動脈圧は20mmHgであり,肺高血圧症には至っていなかった。第13病日に一時退院となり,2016年8月に再入院し,第3病日に心膜剥離術を施行した。心膜の石灰化は右房・右室・下大静脈周囲に認め(図3A),徐々に心膜を剥離した。 剥離後, 右房・右室の拡張は改善した。採取した心膜を病理検体として提出したところ,病理像では心膜の硬化した線維性組織を認め収縮性心膜炎に矛盾しない所見(図3B)であったが,結核感染を疑う所見や虫卵は認めなかった。術後の経過は良好であり,CT所見でも心膜の広範な剥離ができていることが確認でき(図4)たため第24病日に退院した。退院後に血液検査から抗寄生虫抗体スクリーニング検査を施行したところ,ウエステルマン肺吸虫でクラス1の結果であった(表2)。これは検査時点においてウエステルマン肺吸虫が感染の活動期である可能性は低いが,感染の慢性期である可能性を示唆された。考察 本症例は,来院時の心電図で3対1伝導の心房粗動を認め,胸部CT検査では心膜の石灰化と両側肺血管陰影の増強,小葉間隔壁の肥厚,胸水貯留,肝辺縁の鈍化,胆嚢壁の浮腫状肥厚を認めた。左右心室内での同時圧測定で拡張早期におけるdip & AB(図2)胸部単純X線写真と胸部CT

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