南予医学雑誌19巻
63/92

風谷、他:肺吸虫症との関連が示唆された収縮性心膜炎の1例南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-61-序言 収縮性心膜炎(constrictive pericarditis:CP)は心膜の線維性肥厚や癒着, 石灰化に伴い心室の充満が抑制される疾患である。20世紀初頭には結核が原因として最多であったが,先進国ではその数は稀になった。現在はウイルス性あるいは特発性心膜炎後に数ヶ月~数年経って起こるものや,開胸術後や縦隔への放射線照射後に起こるものが多い1)。 今回,CPの原因として肺吸虫症の関連が示唆された1例を経験したので報告する。症 例【症 例】66歳,女性【主 訴】動悸,倦怠感【既往歴】小児期に肺吸虫症罹患,結核の既往なし【現病歴】2016年4月中旬,動悸と倦怠感のためかかりつけ医を受診し,心不全を疑われ当院へ緊急搬送された。【入院時身体所見】身長158.7cm,体重48.2kg,脈拍数150/分,血圧182/138mmHg,体温36.1℃,SpO2 94%(room air),眼球結膜黄染なし,眼球結膜蒼白なし,外頸静脈怒張あり,Kussmaul徴候あり,心音整,心雑音なし,心膜ノック音聴取,呼吸音清,腹部平坦・軟・腫瘤を触知せず・腸蠕動音正常,両下肢圧痕性浮腫あり。【入院時検査所見】心電図:上室性頻拍と考えられる波形であった(図1A)。その後アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物20mgを急速静注すると,3対1伝導の心房粗動に変化した(図1B)。経胸壁心臓エコー:傍胸骨左縁長軸像では,後壁側の心膜輝度上昇を認めた。傍胸骨左縁短軸像では拡張期における右室による心室中隔の圧排を認めた。壁運動低下は認めず,E/e’=11であった。胸部単純X線写真:心拡大と肺血管陰影の増強を認めた(図2A)。胸部単純CT:心膜の肥厚と著明な石灰化を認めた(図2B)。また,右房と左房の拡大,両側胸水貯留,両肺野の小葉間隔壁の肥厚,肺血管陰影の増強,肝辺縁の鈍化,胆嚢壁の浮腫状肥厚を認めた。検体検査:軽度のビリルビンの上昇,胆道B アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物A来院時20 mg静注後A来院時(図1A)来院時心電図(図1B)アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物20mg静注後

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る