南予医学雑誌19巻
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南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-53-  脾臓低形成を認めた糖尿病合併侵襲性肺炎球菌感染症の症例~当院における侵襲性肺炎球菌感染症の後方視的検討も含めて~   症例報告受稿日 平成30年10月15日受理日 平成30年11月21日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 研修医 田中 武道 田 中 武 道1),中 西 英 元2), 鹿 田 久 治2),金 子 政 彦2) 1)市立宇和島病院 臨床研修センター 2)市立宇和島病院 血液内科要   旨 解剖学的無脾症は侵襲性肺炎球菌感染症のリスク因子とされるが,解剖学的脾臓低形成と脾臓機能低下の関連は確立した知見ではない。今回我々は,脾臓低形成を伴った糖尿病合併侵襲性肺炎球菌感染症を経験した。 症例は60歳代男性。5日前からの発熱と腰背部痛のため近医受診したところ,炎症反応高値,肝機能障害,および腎機能障害を認め当院に救急搬送された。血液培養と喀痰培養から肺炎球菌が検出され侵襲性肺炎球菌感染症と診断した。CTでは脾臓低形成を指摘された。経過中に化膿性脊椎炎も合併したが,整形外科的手術と長期の抗菌薬投与を行い治癒した。 過去10年間に当院で経験した本症例を含む侵襲性肺炎球菌感染症25例を後方視的に検討した。脾臓低形成群と糖尿病合併群で死亡例が多い傾向があったが,症例数も少なく統計学的有意差はなかった。脾臓低形成症例でも,肺炎球菌など莢膜を有する病原体による侵襲性感染症では重症化する可能性があるため注意深く診療する必要がある。 (南予医誌 2018;19:53-59.)Key Words:侵襲性肺炎球菌感染症, 脾臓低形成,脾臓容積

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