南予医学雑誌19巻
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南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-44-はじめに 手術室における確認不足は患者の生命を脅かしかねない重大な医療事故に繋がる危険性がある。WHOは,周術期の患者安全として,平成21年WHO手術安全チェックリストを編集し,全世界で使用されている。 当院手術室では,平成22年より皮膚切開前の安全確認であるタイムアウトを導入,平成25年より独自の手術安全チェックリストを作成し,WHOが推奨する麻酔導入前・皮膚切開前・手術室退室前の3場面での安全確認を導入した。しかし,タイムアウト実施時,手術に携わるスタッフ全員が手を止めて実施できていなかったり,実施途中で手術を始めようとする現状があり,確実な安全確認に繋がっていないと疑問に感じた。 そこで,手術患者のさらなる安全性向上を目指し,手術安全チェックリストの使用状況の現状と,携わる医療従事者の手術安全チェックリストに対する認識の違いを調査するため,本研究に取り組んだ。研究目的1) 手術安全チェックリスト使用状況の現状を調査する。2) 手術に携わる医療従事者に手術安全チェックリストに関するアンケートを実施し,医師と看護師の認識の違いを調査する。研究方法①   調査期間:平成30年5月7日~平成30年7月31日②   調査対象:手術に関わる医療従事者74名(医師52名,手術室看護師22名(師長を除く))③  用語の定義(場面別)  サインイン:麻酔導入前の安全確認   タイムアウト:皮膚切開前の安全確認   サインアウト:手術室退室前の安全確認④  方 法1) 独自に作成した手術安全チェックリスト使用状況調査票(表1)を用いて,手術安全チェックリスト(表2)の場面別確認状況を他者評価により調査し,医師・看護師別に適正に実施できているか検討した。2) 手術安全チェックリストのリストアップ項目別重要度・安全確認のタイミング・活用していく上での問題点に関するアンケート(表3)を実施し,医師と看護師の認識の違いを検討した。リストアップ項目別重要度の解析は,医師と看護師のデータを項目ごとに集計し ,Excelソフト用いて統計学的に解析した。2群間の比較はFisher検定を用い,p<0.05で有意差ありとした。⑤  倫理的配慮    研究対象者に,手術室アンケート調査協力のお願いの書面を用いて,研究の主旨・方法・倫理的配慮を充分説明し,アンケートの回収をもって同意を得た。対象者のデータは厳重に取り扱い,無記名とし個人が特定されないように配慮した。    本研究は院内倫理審査会の承認を受けて(IRB-No.185-155)実施した。結 果1) 手術安全チェックリスト使用状況調査    調査手術件数は48件であった。適正に安全確認が実施できていた割合は,サイ

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