南予医学雑誌19巻
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南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-40-ると代償的に小腸からのコレステロール吸収が増加する。そのため,スタチンによるLDL-C低下効果が不十分な症例では,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤であるエゼチミブの併用が効果的であり,両者の併用により有意にLDL-Cが低下し,冠動脈プラークが退縮すること8)や,心血管疾患の予後を改善したことが報告された9)。さらに,近年,ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体製剤も使用可能となっている。冠動脈疾患既往患者でイベント再発リスクの高い症例では,複数薬剤併用による厳格なLDL-C管理が求められる。 今回の検討では,全体の71例で心血管イベントを複数回発症していた。今回の検討期間は新たなガイドラインの発表前であったが,その基準に当てはめると58例(緊急PCI群:12例,待機的PCI群:46例)がLDL-Cを70mg/dL未満にコントロールすることを考慮する症例であった。日本人における心血管イベントリスクの高い患者の脂質管理について検討した報告では,LDL-Cが100mg/dL未満であったのは急性冠症候群発症患者の68%,他の冠動脈疾患患者の55%で,70 mg/dL未満であったのは,それぞれ27%,16%であった10)。当院でのイベント再発症例における脂質管理の検討(表5)では,PCI後には80%以上の症例でLDL-Cは100mg/dL未満にコントロールされていた。しかし70mg/dL未満を考慮する症例においてはその目標達成率は4割程度で,エゼチミブ併用率も増加しておらず,治療介入が不十分である可能性がある。個々の患者背景を考慮し,高リスク症例においてはさらに厳格な二次予防のための治療を行う必要がある。 参考文献1)  Koren MJ, Hunninghake DB, In-vestigators A. Clinical outcomes in managed-care patients with coronary heart disease treated aggressively in lipid-lowering disease management clinics: the alliance study. J Am Coll Cardiol 2004;44:1772-1779.2)  Schwartz GG, Olsson AG, Ezekowitz MD, Ganz P, Oliver MF, Waters D, et al. Effects of atorvastatin on early re-current ischemic events in acute coro-nary syndromes: the MIRACL study: a randomized controlled trial. JAMA 2001;285:1711-1718.(表4)リスク区分別脂質管理目標治療方針の原則管理区分脂質管理目標値(mg/dL)LDL-CNon-HDL-CTGHDL-C一次予防 まず生活習慣の改善を行った後 薬物療法の適用を考慮する低リスク<160 <190 <150 ≧40 中リスク<140 <170 高リスク<120 <150 二次予防 生活習慣の是正とともに 薬物療法を考慮する冠動脈疾患の既往<100 (<70)* <130 (<100)* * 家族性高コレステロール血症,急性冠症候群の時に考慮する。糖尿病でも他の高リスク病態(非心原性脳梗塞,末梢動脈疾患(PAD),慢性腎臓病(CKD),メタボリックシンドローム,主要危険因子の重複,喫煙)を合併する時にはこれに準ずる。動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版より

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