南予医学雑誌19巻
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岩田、他:超音波検査を用いた鼻骨整復南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-29-序言 鼻骨骨折は顔面骨骨折のうち最も頻度の高いものであり,日常診療及び救急外来でよく遭遇する疾患の一つである。鼻骨骨折の整復の成否については,術者や患者の主観的評価に頼っているのが現状である。しかし,腫脹が強いため偏位が明らかでない例や,整復後も鼻閉や嗅覚障害が残る例もあり,整復の成否を確かめる必要がある。そこで鼻骨骨折整復後の成否について,CTを用いて確認すべきという報告もみられる2)。ただ,CTを用いる方法は被爆の観点やコスト面からも必ずしも容易におこなえる検査とはいえない。一方,エコーは簡便・低侵襲であり,術中にreal timeで整復の成否を判定するのに有用との報告がある3)。 今回,我々はエコーを用いて鼻骨骨折徒手整復術を施行し,整復におけるエコー評価の有用性について検討したので報告する。対象および方法 2016年9月から2017年9月までに当院を受診し,CT検査で鼻骨骨折と診断され,エコー下に鼻骨骨折徒手整復術を施行した11例を対象とした。 超音波断層装置は日立社製のALOKA ARIETTA70を使用し,プローブは12MHzのリニア型を用いた。すべて全身麻酔下に行い,整復前にエコーで骨折線を描出し鼻骨骨折の段差や偏位を確認した。骨折の整復はワルシャム鉗子を用いた一般的な手技で行った4)。整復後に視診・触診に加えてエコーで評価し,整復が不十分な例では整復,評価を繰り返し行った。 固定は医療用スポンジ(メロセル,日本メドトロニック)による内固定を3日間,シーネ(スプリント材,アルフェンスシーネ®)による外固定を14日間行った。 エコーでの描出方法は,CTでは軸位評価が中心であるため,水平断を基本とした画像を得るようにした。骨折の状態によってはプローブを斜め方向や縦方向にあてたほうが描出されやすい場合もあり,そのような例では水平断に加えて斜位や矢状断での骨折像も得るようにした。(図1)結果 鼻骨骨折の評価にエコーを用いた11症例を示す。症例は男性6例,女性5例で年齢は12歳から85歳,10代の若年者が半数以上を占めた。受傷機転はスポーツが多かった。受傷から整復までの期間は5日から14日,平均日数は9.5日であった。骨折形態5)の内訳は,斜鼻型変形が多く,次いで混合型,鞍鼻型の順であった。(表1)症例提示 以下に代表症例を提示する。症 例1:22歳,男性 チェーンソーで切っていた木片が顔面に当たり,同日当院救急外来を受診した。CT検査で鞍鼻型の鼻骨骨折を認め,受傷後8日目に全身麻酔下に整復術を施行した。 エコーで陥凹所見がほぼ改善されたことを確認し整復を終えた。(図2)症 例2:16歳,男性 野球の練習中に硬球が顔面に当たり,同日当院救急外来を受診した。CT検査で斜鼻+鞍鼻型の鼻骨骨折を認め,受傷後13日目に全身麻酔下に整復術を施行した。 整復前のエコー所見で骨の不連続性を確認し,徒手整復を施行した。視診及びエコーで改善を確認し整復を終えた。(図3)

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