南予医学雑誌19巻
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越智、他:八幡浜・大洲圏域における大災害時勤務交流南予医誌 Vol.19 No. 1 2019-9-はじめに 筆頭著者(越智)は2012年10月,愛媛県災害拠点病院コーディネータに委嘱され,八幡浜・大洲圏域災害医療対策会議委員として,同圏域(3市1町)の災害準備に尽力している。 一方,著者らの市立八幡浜総合病院は,八幡浜市,伊方町など人口約5万人をカバーする救急告示病院であり,災害拠点病院,原子力災害拠点病院にも指定されている。当院は南海トラフ巨大地震において,震度6強の地震と,最高9mの津波に襲われ,1階天井まで浸水する可能性がある。そして,道路損壊や浸水などの悪条件下に,どのくらいの数の職員が参集できるか,懸念されている。 当院では2014年,事業継続計画(BCP)策定の基礎調査として,南海トラフ巨大地震時に確保できる職員数について調べた。その結果,大地震による道路損壊時に大津波警報が出た場合,津波浸水予想域を避けて徒歩で1時間以内に登院できる職員は31.8%にとどまった1)。 また2015年には,大災害時に徒歩での参集に6時間以上を要する当院職員に,災害時通勤に関するアンケート調査を行った。その結果,77.3%が災害発生時,当院への参集が困難な状況において,他の医療機関や救護所での災害対応に協力したいと答えた2),3)。 災害時のマンパワー不足は圏域全体の問題である。このため,当圏域では,大災害時において通勤に長時間を要する医療機関職員が自院へ参集する代わりに,自宅近くあるいは通勤途上の,他の医療機関や救護所・施設などへ参集するシステムが,圏域の災害医療対策会議で提案されている。そこで今回,圏域内の他施設においても,災害時他施設勤務に理解を示す施設長や職員がどのくらいいるかを把握するために,上記の院内調査と同様の調査を行った。方法 2017年1月,八幡浜保健所から,八幡浜・大洲圏域の17の有床医療施設の施設長に,質問票を送付した。その中で各施設長に対し,災害時に自施設職員が他施設で活動すること,ならびに他施設職員が自施設で活動することの可否について質問した。さらに,所属職員中の,災害時に他施設で活動できる職員の数,職種,想定する施設名などについて調査を依頼した(表1)。結果 アンケートを送付した17の有床医療施設のうち,11施設(64.7%)から回答があった。所属長が大災害時に他施設等での活動可と回答したのは9施設(52.9%),他施設職員を受け入れると回答したのは10施設(58.8%)であった。1施設(5.9%)は自施設へ受け入れるが,他施設へは派遣できないと回答した(図1)。 自施設職員が他施設で活動することを許す条件としては,大津波・土砂崩れ等の危険を避けて自動車で通勤することが困難であること(7施設),遠方からの勤務(5施設),施設長の了承・事前届け出(5施設)および管理職でないこと(2施設)が上げられた。一方,自施設での活動を許容する場合の条件としては,事前届け出(6施設),施設職員の指示に従うこと(5施設),謝礼や食料・宿泊施設などの提供を求めないこと・事故等に関しては施設の責任を求めないこと(2

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