南予医学雑誌 第18巻
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南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-84-説明や学術の方の開発に関わる話,あるいはもっと基礎的な病態機序や薬の作用機序などの話を研修する機会として,それは定着していった。 当初水曜日のみの開催にしていたが,当院若手Drの研修としては,自分が主治医となった患者さんの病態や治療方針などを皆で検討する症例検討だけでなく,将来は研究者になる若いDrもいることであろうし,Up-dateなサイエンスも勉強する機会を作りたいと考え,火曜日を症例検討(M&M)に,水曜日を水曜ランチョンとして主に学術の方の最新の話題を聞く場として位置づけた。この話をH18年2月の医局幹部会で提案し,4月新しい年度から週2日制で開始することができた。 H21年に小生が県立中央病院に転出し,その後教育委員会の仕事を濱田副院長が受けていただいた。濱田先生はランチョンの予定を組むために科別当番制を敷いて,週2日のランチョンを問題なく続けていただいた。 H24年に再び小生が当院に戻ってきた時には,手伝ってくれていた影山副薬局長は定年退職し,その代わりに総務課に新しくできた臨床研修係が教育全般について関わる仕組みとなっていた。ランチョンに関しても臨床研修係が企業に対する窓口となり,会場の世話もすべてやっていただいていた。 「継続は力なり」。永年続けることによって,火曜日と水曜日のランチョンは市立宇和島病院の文化といえる状態になっていると思う。当初はなかなか人が集まらなかった。せっかく準備していただいた弁当が余ってしまい,申し訳なく感じていた時期が長く続いた。しかし,最近は結構な数の参加者である。もちろん弁当目当ての人もいるだろう。しかし,それはそれで問題ない(はずだ)。弁当につられながら,目の前で展開される講義に目をやり,注目し,勉強していただければそれで良い。 ランチョンを始めて12年,製薬企業にも大きな波がやってきた。国がジェネリックを推進し,オリジナル製品の売れ行きが大きく落ち込む時代が到来した。結果企業の収益が落ち,多くの研究会が中止された。ランチョンのような研修会も縮小の対象となるのであろう。ランチョンに参加を表明してくれる企業が次第に少なくなってきているのを実感する。結果,来年からのランチョンは企業抜きで,水曜日のM&Mのみに縮小することに決定した。 教育は人を育てること。医療を進めるうえで大切なことは,如何に人を育てるかということである。10年を超えて続けてきたランチョンは大きな力になってきたと自負している。都会では毎日のようにいたるところで研修が可能である。ところが田舎ではなかなかそういった機会を見つけにくい。そのために作った仕組みであったのだが。南予の田舎に若い研修医が集まるのは,当院での研修がそれだけ充実したものになっているという証左である。若い研修医が集まらなければ南予の医療は成立しなくなり,衰退していく。そういった流れにならないように祈るばかりである。

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