南予医学雑誌 第18巻
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渡部、他:宇和島の自殺対策南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-7-得られることがある。 そうすると,「人を自殺へと追いつめる3要因」の輪の重なりがなくなり,「自殺願望」が消退していく。自殺をする気がなくなれば,援助を求める必要がなくなるのである。 私たち援助者は,このようなプロセスが進まぬ間,すなわち涙も涸れず,本人や家族の情動の混乱・困惑が続いている間に,出合い,治療・支援関係,共感に基づいた信頼関係を築かねばならないのだと思う。 Joiner の理論は,自殺の理由・原因とその対応が表裏の関係となって,臨床的に有用なものだと思っている。ネットワーク1) 宇和島圏域における未遂者支援ネットワークについて 宇和島保健所では,H19年度に管内の医療・保健・福祉・警察・消防・司法・労働等関係機関で構成する地域自殺対策検討連絡会を設置し,H20年度には実務者で構成するワーキング部会を立ち上げた。 H25年度のワーキング部会において自殺未遂者向けリーフレット及び相談窓口連絡票を作成し,自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐことを目的に,H26年度から「自殺予防対策相談支援事業」として,救急告示医療機関や精神科病院と連携した支援を開始している。(図8) 本事業は,管内の自殺未遂者やその家族で本事業による支援を希望する者を対象とし,医療機関等から情報提供を受けた保健所が,病院や自宅へ訪問したり,電話・面接等による相談支援を行うものである。 医療機関からの保健所に対する連絡は電話によるものとし,本人に対してタイムリーに支援介入ができるよう地域連携室等医療機関スタッフに協力いただいている。 H26~28年度の連絡件数23件は全て入院中の事例であったため,転院2件を除く21件については連絡を受けた当日~数日(図8)自殺予防対策相談支援事業

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