南予医学雑誌 第18巻
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小倉、他:著明な全身浮腫で発症した血管内大細胞型B細胞リンパ腫南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-71-の亜型とされていたが,臨床経過や予後の違いから2008年に改訂されたWHO分類第4版からは独立した疾患単位として分類されている3)。IVLBCLは血管内で増殖した腫瘍細胞が様々な臓器において血管を閉塞するために多彩な臨床症状を呈する。本邦からの報告によれば最も高頻度にみられる症状は発熱,体重減少および盗汗等の全身症状(B症状)(76%)であり1),その他,肝腫大(55%)・脾腫(67%)による腹部膨満感・腹痛,呼吸器症状(34%),意識障害,痙攣,認知障害等の中枢神経症状(27%),皮疹(15%)等多彩な症状を呈する1,4)。IVLBCLはその臨床症状および検査所見から3種類の病像が報告されているが5,6),本症例は血球貪食症候群および血小板減少を呈しておりMuraseらが報告したAsian variantの特徴7)と合致していた。 本症例は全身浮腫という多彩な臨床症状を呈するIVLBCLとしても非典型的な初発症状を呈し,ランダム皮膚生検を施行した結果,IVLBCLと診断することができた。全身浮腫を初発症状としたIVLBCLの症例は我々が検索した限りでは過去に5例の症例報告があるのみである(表2)5,8-11)。本症例と同様に骨髄検査にて血球貪食像を認めた症例は1例であり,初発症状としては全身浮腫に加えて皮疹,溶血性貧血,腎機能障害等が報告されている。また5例中4例が死亡しており,その内3例は症状の発現から診断に至るまでに6か月以上を要している。臨床症状や検査所見からIVLBCLの可能性を想起した場合は皮膚生検や骨髄生検等により可及的早期に診断する必要があると考えられる。一方,全身浮腫の成因に関しては,Bilgiliらが報告した症例5)では全身浮腫に加え著明な腎機能障害を来しており,その原因を血管内のリンパ腫細胞が血管床からの溢水を引き起こしそのために腎血流が減少したためと考察している。(表2)全身浮腫を初発症状に含むIVLBCLの症例a)R-CHOP;rituximab, cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,prednisoloneb)CPA;cyclophosphamide,DOX;doxorubicin,EP;etoposide,PSL;prednisolonec) THP-COP;rituximab,tetrahydropyranyl adriamycin,cyclophosphamide,vincristine,prednisolone

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