南予医学雑誌 第18巻
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小倉、他:著明な全身浮腫で発症した血管内大細胞型B細胞リンパ腫南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-69-序言 血管内大細胞型B細胞リンパ腫(Intra-vascular large B-cell lymphoma;IVLBCL)は小~中血管内での腫瘍細胞の増殖を特徴とする悪性リンパ腫の一型である。本邦における発症率は非ホジキンリンパ腫の0.1%程度と報告されている1),2)。腫瘍細胞が小血管を閉塞することに起因する多彩な症状を呈することが報告されており,発熱,全身倦怠感,呼吸困難,皮疹,中枢神経症状等が挙げられる1)。しかし全身浮腫はIVLBCLの症状としては非典型的である。今回我々は全身浮腫と急激な体重増加で発症したIVLBCLを経験したので報告する。【症 例】82歳男性【主 訴】全身浮腫,体重増加,息切れ【現病歴】 2017年8月中旬より全身の浮腫と急激な体重増加(2週間で7㎏の増加)を自覚した。同時期より37℃台の発熱も持続し次第に呼吸困難も出現するようになったため当院を受診した。【既往歴】80歳:変形性膝関節症手術【アレルギー】なし【内服薬】なし【現 症】身長157㎝,体重98㎏,BMI39.8意識清明,BT38.0℃,BP153/86㎜Hg,HR83回/min,RR20回/min,SpO2 90%(room air) 眼瞼浮腫あり,眼瞼結膜貧血なし,眼球結膜充血・黄染なし,頸静脈怒張なし,心音:過剰心音なし,呼吸音:正常肺胞呼吸音,腹部やや膨満,軟,圧痛なし,四肢浮腫あり,皮膚:冷感・熱感なし,皮疹なし,表在リンパ節触知せず【来院時検査所見】 心電図は異常なし,胸部レントゲン写真では心拡大や肺うっ血所見は認めなかった。経胸壁心エコーでも心機能は保たれていた。血液検査(表1)では白血球数は正常だが分画で幼弱白血球を1%認め,血小板数は低下していた。ASTとLDH高値を認めたがASTに比しLDHは著明に高値であった。腎機能および甲状腺機能は正常であっ(表1)初診時血液検査

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