南予医学雑誌 第18巻
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南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-62-  子宮体癌術後化学療法中に繰り返す偽膜性腸炎を呈した1例   症例報告受稿日 平成29年8月3日受理日 平成29年9月5日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 産婦人科 青石 優子 青 石 優 子,矢 野 真 理,清 村 正 樹, 岩 本 麻 里,中 橋 徳 文 市立宇和島病院 産婦人科要   旨 偽膜性腸炎(pseudomembranous colitis:PMC)はClostridium difcile(C.difcile)感染による臨床病態であり,何らかの原因で腸管内の細菌叢が抑制され,C.difcileが過剰に増殖し毒素産生を起こすことで生じる疾患である。本症は2週間以内の抗菌薬投与が原因となることが多いが,今回,子宮体癌の術後化学療法中に抗菌薬投与がないもかかわらず本症を繰り返した1例を経験したので報告する。症例は76歳 女性。子宮体癌の診断にて単純子宮全摘術および両側付属器切除を施行後,術後補助化学療法としてAP療法(ドキソルビシン+シスプラチン)を行う方針となった。2クール終了後grade4の白血球減少をおこした際,頻回の水様下痢が出現し,C.difcileトキシン検出法で陽性を認めたため偽膜性腸炎と診断した。メトロニダゾール内服にて症状改善したのち投与量を減少して3クール目を施行したが,同様の症状が出現した。有害事象を繰り返すためレジメンをweekly TC療法に変更したが,同様の症状が出現した。本症例では,抗癌剤投与に伴う好中球減少や腸内細菌叢に与える影響が本症発症の誘因となっていることが示唆された。 (南予医誌 2017;18:62-67.)Key word:偽膜性腸炎,pseudomembranous colitis

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