南予医学雑誌 第18巻
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南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-56-  パゾパニブによりCRが得られた悪性葉状腫瘍再発の1例   症例報告受稿日 平成29年5月30日受理日 平成29年6月22日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 外科 岡田 憲三  岡 田 憲 三,中 川 み く,兼 定   弦, 向 井 直 樹,西   悠 介,友 藤 克 博, 佐 藤   創,石 田 直 樹,今 井 良 典, 渡 辺 常 太,根 津 賢 二,梶 原 伸 介 市立宇和島病院 外科 (南予医誌 2017;18:56-61.)はじめに 葉状腫瘍は上皮成分と間質成分よりなる乳房の稀な腫瘍である。それらは組織学的に良性・境界病変・悪性に分類され,多くの局所再発や時に遠隔再発を伴う。悪性葉状腫瘍の25%に遠隔再発が起こり,遠隔再発を来たせば葉状腫瘍の予後は極めて不良である。悪性葉状腫瘍の遠隔再発に対する有効な治療法は現在のところ確認されておらず,内分泌療法は無効で,化学療法についても強く推奨できるものはない。我々は多発肺転移に対してパゾパニブを投与し,2年間以上complete response(CR)を維持している悪性葉状腫瘍症例を経験した。分子標的治療薬による完全寛解の報告は初めてと考えられ報告する。症例 症例は45歳女性。20年ほど前より右乳房に腫瘤あり次第に大きくなっていた。2015年7月当院受診し右乳頭直下に7×7㎝大腫瘤を認めた(図1)。初診時より両肺に多発転移あり(図2),7月腫瘍切除し悪性葉状腫瘍の診断を得た(図3)。肺転移に対してAI療法(ADM,IFM)を3cycle施行したが,progressive disease(PD)で有害事象強いため中止した。そこで悪性軟部腫瘍治療に認可されているパゾパニブに変更した。パゾパニブ投与によりgrade3の高血圧,血小板減少,手足症候群とgrade2のAST上昇を認めたため,一時休薬し症状の改善を待って半量より再開し漸増した(図4)。高血圧に対してはベニジピンを投与し,現在のところ有害事象はない。肺転移はすみやかに消失し2年以上CRを維持している(図5)。

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