南予医学雑誌 第18巻
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甲谷、他:当院における経皮内視鏡的胃瘻造設術の検討南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-53-患者も増加しており,その対策が重要である。 当院では,自己抜去対策として,腹帯の使用や,上下つなぎの病衣の使用を行っており,患者家族への説明ののち,同意がえられれば,行動制限を行うこともあり,このため,近年挿入チューブ自己抜去例は減少している。さらに,様々な対策にも関わらず発生したチューブ自己抜去時は,全例,比較的早期にチューブが再挿入できており,汎発性腹膜炎など,重篤な状態には至らなかった。 次に多い合併症は,挿入部創感染症で4例(6%)であった。このことは,当院でも施行しているPull法では,口腔内細菌が関与しているといわれており,本邦報告例9)-13)でも創部感染は5~18%に認められており,諸家の報告と同程度と思われた。 一般的には,高齢者は,加齢による諸臓器の機能低下を伴い14),種々の併存疾患をかかえる特徴を有している15)。このため外科手術においては,合併症が発生すると,連鎖的に臓器不全に陥る危険性があるため慎重な周術期管理が必要であるとされている16)。さらにGoodwinらによると自立できない高齢者の50%は栄養障害をかかえているとの報告17)があり,PEGが低侵襲な手術とはいえ,高齢でかつ基礎疾患を有する,全身状態が不良な症例にはリスクが予想される。また,PEG施行と直接関係ない早期死亡が1例認められた。このことは,PEG症例そのものが高齢かつ基礎疾患を有する全身状態不良症例がほとんどであるため,施行に当たり本人および家族への術前の十分な説明が必要であると考えられた。文献1)  Ponsky JL, Gauderer M:Percutaneous endoscopic gastrostomy A nonoperati-tive technique for feeding gastrostomy.Gastrointest Endosco1981; 27: 9-11.2)  PonskyJL, : techniques of percutane-ous gastrostomy. Igakushoin, NewY-ork, Tokyo; 1988; p21-513)  RussellT. R, Brotm an M, Norris F   percutaneousgastrostomy: A simpli-fied and cost-effective technique.Am. J. Surg1984; 184: 132-137.4)  UenoF, KadotaT.Percutaneous endo-scopic gastrostomy   A simplified new technique for feed-ing gastrostomy Progress of Digestive Endoscopy, 1983; 23: 60-62(表2)対象症例の基礎疾患(表2)対象症例の基礎疾患(表・2)対象症例の基礎疾患1.1)脳血管障害または神経疾患に伴う嚥下障害48例①脳梗塞後遺症25例①脳梗塞後遺症25例②脳出血後遺症19例③パーキンソン病4例2)認知症に伴う嚥下困難症7例2)認知症に伴う嚥下困難症7例3)呼吸器疾患(肺炎)によるもの12例4)高齢に伴う摂食嚥下困難例1例(表・3)PEG症例の合併症挿入部皮膚からの出血1例挿入チブ自己抜去5例挿入チューブ自己抜去5例挿入部創感染症4例腹腔内臓器・血管など誤穿刺はなかった.腹腔内臓器血管など誤穿刺はなかった.(表3)PEG症例の合併症

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