南予医学雑誌 第18巻
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甲谷、他:当院における経皮内視鏡的胃瘻造設術の検討南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-51-はじめに 近年,嚥下障害を有する症例に対しての栄養管理方法として,内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy,以下PEG)を用いた栄養方法が,他の栄養管理法に比べて多くの利点を有するため,急速に普及し,施行されている。今回,私達は,2011年4月から2016年12までに当院においてPEGを行い,経腸栄養を施行した68例を後方視的に,その成績を検討したので報告する。対象および方法(対 象) 2011月4月から2016年12月までに当院においてPEGを行い経腸栄養法を施行した68例とした。男性22名,女性46名。年齢は61歳~95歳で平均年齢は81歳であった。PEG手技としては,Ponskyらの報告によるPull法1),Sacks-VineTm GASTROSTOMY TM Kit等の使用によるPush法2),およびIntroducer法3)4)の三つの方法が,主に一般的に施行されているが,当院でのPEGは,全例pull法で施行し,周術期管理は院内クリニカルパス(表1)に準じて行った。 今回,対象症例において,基礎疾患,合併症,PEG後の生存期間について検討した。結果1.対象症例の基礎疾患(表2)1) 脳血管障害または神経疾患に伴う嚥下障害が48例と大多数を占めていた。(その内訳は①脳梗塞後遺症25例②脳出血後遺症19例③パーキンソン病4例であった。)その他に2)認知症に伴う嚥下困難症が7例,3)呼吸器疾患(肺炎)によるもの12例,4) 高齢に伴う摂食嚥下困難例1例であった。2.対象症例の合併症(表3) 挿入部皮膚からの出血1例,挿入チューブ自己抜去5例(7.4%),挿入部創感染症4例(6%)が認められた。最も頻度の高い合併症は,挿入チューブ自己抜去例であったが全例,比較的早期にチューブが再挿入できており,汎発性腹膜炎など,重篤な状態には至らなかった。次に多くみられたのは,挿入部創感染症4例(6%)が認められ,この合併症は創部の発赤と排膿を認めたものを陽性とした。PEG周術期に関する重篤な合併症は認められなかった。3.PEG後の生存期間 PEG後30日以内の早期死亡例が1例あり,この症例は,繰り返す肺炎のためPEGを施行したが,再び肺炎を併発し死亡したもので,これは基礎疾患の悪化によるものであった。PEG後生存期間は,全68症例でみると,30日~1500日であり,生存期間中央値は580日であった。考察および結論 PEGは1980年にponsky及びGaudererにより発表され5)長期にわたり経腸栄養を必要とする症例に対し, 経鼻胃管栄養に比較して肺炎発症頻度が少ない報告6)や,多くの嚥下リハビリが行い易いメリットがあること7)や,介護負担に対する有用性の報告8),などから,経鼻胃管栄養に代わって現在急速に普及しつつある。 PEG施行にあたりさまざまな合併症が認められるが,当院では重篤な合併症は認めなかった。当院で最も多くみられた合併症は,挿入チューブ自己抜去5例であったが,高齢患者が増加する最近にあって認知症の

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