南予医学雑誌 第18巻
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南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-4-なった紹介患者17名の精神科治療の経過を追ってみた。(図4) 精神科受療歴のない17名の自殺未遂者が市立宇和島病院退院後,紹介状を持って精神科外来を初診した患者の治療継続の状況をみると,過半数は1ヶ月以内に終了し,9ヶ月続いた1名と転医した2名以外は,半年以内ですべて終診となっていた。総合病院の三次救急医療を利用した自殺未遂者の「再発防止・再企図防止」は,精神科外来医療だけでは限界があることが明らかとなる。精神科に紹介されても,外来受療が続かない現実から,地域保健や他の地域資源との何らかの連携の必要性を感じることとなった。3)関係機関の声 自殺対策検討連絡会の中では,「救命後,当日・数日で退院。その後の精神的フォローが心配(救急医療機関)」,「自殺念慮者に紹介状を渡しているが,受診がない。精神科治療で対応できない自殺要因であり,限界がある(精神科病院)」,「自殺未遂を繰り返す事例があるが,どこへつなげてよいかわからない。紹介してもつながらない(消防署・警察)」,「自殺未遂者が,保健師につながっていない事例が多い(市・町)」,「未遂者相談事例が挙がってこない(保健所)」などの関係機関の声が上がった。救急医療機関で治療を受けて生命の危機を脱するか,あるいは創傷の処置が終わると,心理的・精神科的な介入が十分になされず退院,帰宅していく例が多かったという現状があった。自殺のプロセス 市立宇和島病院で出会う自殺未遂者と関わるうちに,以下のような自殺のプロセスに関する理論が臨床に役立つことに気づく。1)自殺プロセス(張賢徳)(図5) 張賢徳(帝京大学精神科)は3),自殺はある日突然起こるものではなく,自殺に至るプロセスが存在する。さまざまなライフイベントにさらされることが自殺プロセスの入り口になると考えられ,プロセスの途(図4)自殺未遂者(自殺未遂後 精神科紹介・初診)

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