南予医学雑誌 第18巻
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南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-36-性と判定されやすくなった一方で,その中にはHER2/CEP17比の高くない症例も含まれるようになったことは,理解しておく必要がある。 4)HER2陽性症例全体での検討 IHC法およびFISH法でHER2陽性と判定された症例は,2014年度が6例,2015年度が7例,2016年度が18例であった。それぞれサブタイプ別に分類すると,2014年度はLuminal HER2が1例,HER2enrichedが5例,2015年度はLuminal HER2が4例,HER2 enrichedが3例,2016年度はLuminal HER2が12例,HER2 enrichedが8例であった(図4)。HER2陽性症例全体でみても,最近3年間でLuminal HER2症例が増加していることがわかった。HER2検査ガイド改定後,改定前には境界域(equivocal)と判定されていたHER2/CEP17比の高くない症例もHER2陽性症例に含まれるようになったことが,Luminal HER2症例のような真のHER2陽性乳癌として治療すべきかどうか悩む症例の増加と関与しているのではないかと考える。HER2増幅比の高くない症例に対し,真のHER2陽性乳癌と同様に扱い,治療方針を決定すべきかどうかは議論の余地がある。このような症例では,腫瘍径や核異型度,増殖能,腋窩リンパ節転移の有無などを基に,再発リスクを十分説明した上で,患者個々人に応じた治療選択をしていく必要がある。当院では,Webベースの乳癌予後予測ツールPredict6)(http://www.predict.nhs.uk)を参考に,補助療法の有無が予後にどれほど影響するのかを患者に提示し,治療方針決定の助けとしている。患者説明の際には,偏りのない情報提供を行い,治療選択の幅を広げることが重要と考える。 結 語 当院における過去3年間のHER2陽性症例の検討結果から,HER2検査ガイド改定以降,FISH法でHER2陽性と判定される症例が増えていることが分かった。HER2検査ガイドの改定で,IHC法スコア2+の定義が広くなったことや,ISH法の陽性基準が引き下げられた(図3)FISH法陽性症例のHER2/CEP17比7.683.252.5324.582.132.42012345678Luminal HER2HER2 enriched症例2 症例3 症例4 症例5 症例6症例7症例1 症例8

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