南予医学雑誌 第18巻
36/91

中川、他:Luminal HER2 乳癌の増加と広がる治療選択南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-35-定され,リフレックステストが行われる症例の増加に伴い,FISH法でHER2陽性と判定される症例も増加したと考えられる。3) FISH法でHER2陽性と判定された症例の検討 2014年度から2016年度までの3年間に,FISH法が実施されHER2陽性と判定された症例は8例であった。8例をSt. Gallenコンセンサス会議で提唱されているサブタイプ別に分類すると,7例がLuminal HER2(ホルモン受容体陽性かつHER2陽性),1例がHER2 enriched(ホルモン受容体陰性かつHER2陽性)であった。一般的にHER2陽性乳癌は,ホルモン受容体が陰性で,悪性度が高いとされるHER2 enrichedであることが特徴とされてきたが,最近3年間にFISH法でHER2陽性と判定された症例の多くがLuminal HER2であった。Luminal HER2は抗HER2療法やホルモン療法が有効であり,HER2 enrichedと比較して再発リスクが少ないとされている。乳癌診療ガイドラインでは,HER2陽性術後乳癌に対しては術後化学療法+トラスツズマブを強く推奨しているが2),再発リスクが高くないLuminal HER2乳癌に対して脱毛などの有害事象を伴う化学療法+トラスツズマブを導入するかどうか悩まされる症例が多いのが現状である。 FISH法でHER2陽性と判定された症例のHER2/CEP17比を比較したところ,8例中3例はHER2/CEP17比が1.8~2.2であり,HER2検査ガイド改定前のFISH法の基準で境界域(equivocal)と判定される,HER2増幅比のさほど高くない症例も含まれていた(図3)。従来,FISH法の陽性基準は「HER2/CEP17比が2.2を超える」であり,「HER2/CEP17比が1.8~2.2」の症例は境界域(equivocal)と判定されていた。HER2検査ガイド改定以降は「HER2/CEP17比が2.0以上」が陽性と変更され,またHER2/CEP17比が2.0未満でも癌細胞あたりの平均HER2遺伝子コピー数が6.0以上のものは新たに陽性と定義された。陽性基準の引き下げにより,FISH法でHER2陽(図2)IHCスコア2+症例の検討2例9例14例8例2014年2015年2016年HER2 陽性HER2 陰性

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る