南予医学雑誌 第18巻
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南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-2-問題が認められることを,世界保健機関(WHO)の調査(心理学的剖検 WHO多国間共同調査2))も示している。(図1) その診断名は,うつ病,依存症など,自殺する前には何らかの精神疾患に罹患していたことになる。 上記の概括的なことを踏まえると,当地の高い自殺死亡率,自殺者を減らすためには,当地域の実情に即したより根本的な自殺対策が急務となっている。 本論では,南予地域の三次救急をになう市立宇和島病院(救急部門,地域連携室)を拠点に,救急・一般科医療と精神科医療との連携(G-Pネット),保健所がコーディネイトする「自殺未遂者の地域包括ケア」(宇和島の自殺未遂者支援)の現状と課題について述べる。また,自殺の原因疾患の第2位であるアルコール関連問題対策(愛媛県でもアルコール健康障害対策基本法のもと対策推進計画を策定中)の重要性についてふれる。宇和島圏域の現状1)自殺死亡率は県内ワーストワン 当地域の自殺の推移と愛媛県内の他地域との比較を見る。(図2) 宇和島保健所管内(宇和島市,松野町,鬼北町,愛南町)の自殺者数の推移(H17~H27)を示す。男女合計で見ると,全国と同様にH9年頃より自殺者数は増加し,40人前後で推移,H21年より30人前後に減少し,H24年より20人前後とH7年の水準と同程度となる。全国の動向とほぼ同様な傾向がみられる。 愛媛県内の保健所別自殺の標準化死亡比(SMR standardized mortality ratio)でみる。(図3) 標準化死亡比とは,観察集団の年齢構成を基準となる集団の年齢構成を当てはめて,実際の死亡数と基準母集団の死亡数の比をいう。我が国の平均を100としており,標準化死亡比が100以上の場合は我が国の(図1)自殺と精神障害(WHO公表データ)Bertolote,J.M.2007

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