南予医学雑誌 第18巻
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南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-24-序言 南予地域は愛媛県の南西部に位置し,大洲地区広域消防事務組合消防本部,八幡浜地区施設事務組合消防本部,西予市消防本部,宇和島地区広域事務組合消防本部,愛南町消防本部の5消防本部で管轄されている。人口は約25万であり,高齢化率が37%を超え,過疎化が進んでいる地域である。 一方,DNAR(Do-Not-Attempt-Resuscita-tion)要請とは,患者本人または患者の利益にかかわる代理者が,患者がCPA(心肺停止)状態に陥った場合にもCPR(心肺蘇生法)を行わないことを事前に要請することをいう1),2)。これは尊厳死の概念に相通じるもので,癌の末期や救命の可能性がない疾患や老衰などで,本人または家族の希望により不必要な延命を行わないことに通じる。 このDNAR要請に関して,全国の救急現場で問題が起こっている3)-6)。例えば,心停止またはそれが迫った段階で,家族等が感情的になり,DNARの意思表示があるにも関わらず,蘇生処置を強く要求する場合がある。また,現場に居合わせた家族同士でCPRに関する意見が食い違うこともある。蘇生拒否傷病者の搬送ということで,医療機関到着後に主治医から,処置せずに搬送してほしかったと言われることもある。以上より,管轄地域におけるDNAR要請や自宅,施設等での看取りにまつわる問題の実態把握のために,南予地域メディカルコントロール協議会として調査を実施することとなった。対象と方法 対象は南予地域メディカルコントロール協議会に参画している5消防本部の管轄地で,平成26年9月1日以降の1年間に救急搬送されたCPA(心肺停止)傷病者の関係者とした。調査方法としては,救急隊及び病院関係者に対し,搬送後,家族などから聞き取りをして,回答用紙(表1)に記載するよう依頼した。なお,救急隊と医療機関の回答が食い違った場合には書面によるDNAR意思表示があったものを第1優先,次に担当医師等による意思確認内容を第2優先,第3に家族による意思確認内容を採用した。 集計内容としては回答を得たCPA搬送例のうち,DNAR要請があった例の比率および意思表示の方法,回復困難な疾病などを有する例の比率と疾病の種類,DNAR要請があった傷病者の年齢層別の割合などについて調べた。 また書面でDNARを要請している傷病者に関して,具体的・詳細な搬送経過を聴取し記載した。結果1.DNAR要請があるCPA傷病者の割合 愛媛県南予地域5消防本部の管轄地において,平成26年9月以降の1年間に救急搬送されたCPA例は373件あり,うち253件(67.8%)に関して回答を得た。253件中DNARの意思があった傷病者は61件(23.4%)で,意思表示の方法としては書面が5件(253件中の2.0%),家族への意思表示または家族による代理意思表示が48件(同18.2%),担当医師等への意思表示が8件(同3.2%)を占めた。DNAR要

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