南予医学雑誌 第18巻
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南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-10- 地域連携室は現在,医事課長補佐,地域連携係長,看護師1名 ,社会福祉士4名,事務員2名,臨床心理士2名 で構成される。当初は未遂者支援に対するノウハウも乏しく,取り組みには消極的であり,年間の介入件数は5件に満たなかった。その後,H25年より救急部門,診療情報管理室の協力のもと,未遂患者の実態調査を開始した。H26年度から昨年度(H28年度)まで,79名の結果をまとめた一部を,(図11)に示す。また,H26年からは主に救急外来,HCUとの連携を強化し,未遂患者や家族に対して,可能な限り早期からの積極的な介入を行うこととした。それにより,H25年度は3%であった介入率が,H26年度には58%,H27年度には74%,H28年度には64%に上昇している。介入率が100%に至らない原因としては,地域連携室の稼働が平日の日中に限られるため,週休日や翌日退院への対応が難しいこと,すでに支援体制が整っており,介入の必要性がないこと,などが多くを占めるように思う。 現在の介入の流れとしては,救急外来に未遂患者が受診した場合,地域連携室に連絡が入り,カルテで必要な項目の情報収集を行う。その後,患者が入院した場合には,主治医や病棟看護師長,担当看護師より,患者や家族に説明・同意のもと,主に臨床心理士に紹介という流れが体制化されている。紹介後は,早期に面接を行い,患者や家族への心理的評価とケア,退院支援,当院での治療が円滑に進むよう,また退院後も引き続き支援が受けられるように,精神科医療や地域保健師,各種相談窓口へのつなぎや紹介などを行う。多くの場合が,在院日数2-3日という限られた時間的制約のなかで,可能な限り多側面から心理社会的な情報を収集し,退院後の適切な支援へつなげることが目標である。 現在の体制が構築できたのは,院内連携のみならず,院外連携がよりタイムリー,スピーディーに行えるようになったことが大きい。院外連携強化の大きな柱としては,二つある。一つは別項で触れてある通り,正光会宇和島病院より週に1回,精神科医が嘱託医として勤務するようになり,院内での精神科コンサルトが可能になったことである。もう一つは,宇和島保健所保健師とのタイムリーな連携である。患者や家族の了解のもと,宇和島保健所への連絡・情報提供の後,入院中の保健師訪問が速やかに行われることで,関係の切れにくい地域ケアへつながりが可能になっているのではないかと思う。それはひとえに,保健所保健師の行動力によるものといえる。未遂者支援に対する視点や仕組みを共有した一つのチームとして,顔のみえる関係ができ,実績を積んでいくことで,より連携が強化されたといえるだろう。 現在は入院患者を主とした支援であること,また市立宇和島病院に搬送される患者は,宇和島圏域のみならず県西南地域に及んでいることなど,まだまだ課題は山積みである。これからもこの取り組みを継続し,一人でも多くの未遂者の再企図を防げるよう支援していきたい。(図11)(図12)アルコール健康障害対策1)アルコール関連問題の実態 アルコール依存症に関しては,H25年の厚労省研究班によると,109万人のアルコール依存症者がいると推計され,それに対し専門医療受療者は4万9千人といわれる。専門治療を受けているのはたったの

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