南予医学雑誌 第18巻
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渡部、他:宇和島の自殺対策南予医誌 Vol.18 No. 1 2017-9-市立宇和島病院での精神科医療と地域連携1) 正光会常勤精神科医による市立宇和島病院での診療実績(図10) 自殺対策のなかで,自殺のハイリスク者である自殺未遂者の支援が重要であることが言われ始めている。しかし,その為には地域医療連携が前提となるが,当地域においては医療機関同士や医療と保健の連携が整ってきた強みがある。 H25年度より,がん診療連携拠点病院 の緩和ケアチームの一員として,(公財)正光会宇和島病院の三人の常勤精神科医が毎週交替で,非常勤医師として市立宇和島病院に勤務することとなった。 緩和ケアへの参画によって,一般科医療(市立宇和島病院)と精神科医療(正光会)との連携(G-Pネット)の素地がつくられた。 重篤な自殺未遂者支援においても,その中心に市立宇和島病院がある。地域連携室と救急部門の院内連携がとられ,さらに地域連携室をハブに宇和島保健所を核とした地域自殺対策のネットワークが機能し始めた。2) 市立宇和島病院地域連携室における自殺未遂者支援の取り組み 市立宇和島病院の南予救命救急センターには,年間約30件の自殺未遂患者が搬送される。搬送される患者は,死に至る危険性の高い手段を用いて自殺を図っていることが多く,その後も再企図及び既遂に至る危険性が高いといえる。 地域連携室では,H20年より開催されている,宇和島保健所地域自殺対策検討連絡会(ワーキング部会)への出席を機に,再企図防止を目的として未遂者支援を開始した。治療を受けて生命の危機を脱するか,あるいは創傷の処置が終わると,特に心理的な介入がなされることもなく退院,あるいは転院,帰宅していくという多くの実状のなか,一人でも多くの未遂患者に介入し,その問題に触れ,適切な支援へとつなげることを目指して取り組みを行ってきた。これまでの経過のなかで,少しずつではあるが取り組みが広がり,院内外の連携が強化されてきた市立宇和島病院の支援体制について紹介したい。(図10)自殺未遂者の実態(市立宇和島病院 H26-H28)

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